研究課題
本研究は、①熱帯山地林の展葉・開花・結実フェノロジーを記述すること、②それらに影響する気象要因(気温・降水量・日長)を特定することを目的としている。本年度は、COVID-19感染拡大による海外への渡航制限を受けて、ベトナムのBidoup-Nui Ba国立公園におけるフェノロジー調査が行えなかったため、これまでの調査記録を用いた統計解析を行った。その結果、5調査区(標高1660-1920 m)全体の観察対象91種全てが雨季始めに展葉したが、観察期間中に開花した種は64種にとどまり、一年の中で明瞭なピークは見られなかった。この結果より、1年周期で咲く種と数年に一度咲く種の共存が示された。また、展葉フェノロジーは日長・気温・降水量の影響を、開花フェノロジーは日長・降水量の影響を有意に受ける一方で、結実フェノロジーに対する気象要因の影響は小さいことが明らかになった。さらに、東・東南アジア9地点における展葉・開花・結実フェノロジーパターンの比較のために、東・東南アジアの9地点(温帯林2地点・亜熱帯林2地点・季節性熱帯林1地点・熱帯雨林2地点・熱帯山地林2地点)における先行研究の展葉・開花・結実フェノロジーデータを用いて、クラスター分析を行った。その結果、熱帯山地林2地点(マレーシア・キナバルとベトナム・ビドゥップヌイバ)の気候(日長・気温・雨量)のパターンは異なっていたが、フェノロジーパターンは類似した。これより、森林のフェノロジーに影響する他の気候要因の存在が示唆された。そして、これらの結果と、被子植物が東南アジアの熱帯山地林に起源するという先行研究の仮説に基づき、群集のフェノロジーが、各地の気象と相関して多様化する過程を示す新たな仮説を構築した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Acta Phytotaxonomica et Geobotanica
巻: 72 ページ: 275-280
10.18942/apg.202016