本研究は自動運転車両の普及段階における交通状態推定手法および道路ネットワークに対する政策決定手法を開発するものである.令和2年度は以下に示す3つの研究を実施した. (1)自動運転車と人間が運転する車がネットワークに共存するときにおける政策立案手法の開発:自動運転車の普及過程において,自動運転車と人間が運転する車が道路ネットワーク中に混在する状況を想定したとき,交通需要,リンク交通容量およびリンク移動時間の不確実性を考慮したうえで,交通量配分を行う手法,および均衡制約付きネットワークデザイン問題を開発した.自動運転車の普及を促進するため,自動運転車専用レーンを最適に設置する政策を対象とした.得られた研究成果をまとめ,査読付き国際誌に投稿した. (2)交通観測データを用いたネットワーク交通状態の確率的な推定手法の開発:不完全な交通観測データを組み合わせて,道路ネットワーク全体の交通状態を確率的に推定する手法を開発した.道路ネットワークの不確実性を考慮した均衡配分モデルを制約として道路ネットワーク全体の交通状態を推定する.複数時間帯の欠測のある交通観測データを用いて,ネットワーク全体で交通状態を推定したところ,対象時間帯におけるOD交通需要の平均と生成交通需要の変動係数が推定できた.得られた成果は1件の国内会議で報告し,成果の一部は2021年6月開催予定の国際会議で発表される. (3)確率的な道路ネットワークにおける最短経路探索問題の開発:道路ネットワーク全体のリンク移動時間が同時分布として表されるときに,ドライバーが経路移動時間の平均とその不確実性を考慮して経路選択を行う場合に,OD間で経路コストが最小となる経路を探索する数理モデルとアルゴリズムを開発した.数値計算の結果,全列挙に基づく解と,提案手法から得られた解が一致することを確認した.得られた研究成果は,査読付き国際誌に投稿した.
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