研究課題/領域番号 |
20J10094
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山崎 友香理 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 表面プラズモン共鳴 / 銀ナノ触媒 / シリカ / 規則的多孔体 / 4-ニトロフェノールの還元 |
研究実績の概要 |
金や銀などの貴金属ナノ粒子は表面プラズモン共鳴を示すことが知られており、それを化学反応に利用したプラズモン触媒の開発・研究が盛んに行われている。高い活性を示すプラズモン触媒を開発するためには、反応種が活性サイトに効率良く吸着することのできる新たな反応場の構築が有効であると考えた。当該研究では、多孔体の高次構造あるいは組成を制御して異なる機能を付与した担体とプラズモンナノ粒子を組み合わせた高活性な新規複合型光触媒の開発・応用を目的としている。 本年度はシリカ担体を利用した銀プラズモン触媒において、多孔質担体の形状が触媒活性にもたらす影響を検討した。具体的には、階層的に配列したマクロ孔を有するマクロポーラスシリカ、メソ孔を有するメソポーラスシリカ、隣接するマクロ孔間にメソ孔が配列したマクロメソポーラスシリカ、細孔を有さないバルクシリカを担体とした銀/シリカ複合型プラズモン触媒を調製し、その触媒活性を調査した。銀ナノ粒子はマクロメソポーラスシリカとマクロポーラスシリカのマクロ孔内に担持され、メソポーラスシリカとバルクシリカでは表面に析出した。また、担体の形状の違いによって銀ナノ粒子の粒径分布にも変化が見られた。 調製した触媒を環境汚染物質である4-ニトロフェノールの還元反応に応用し、暗所下と可視光照射下における触媒活性を調査した。暗所下において、マクロメソポーラスシリカを担体とした銀ナノ粒子触媒はその他の担体を用いた場合と比較して最も高い活性を示した。これは隣接するマクロ孔間を繋ぐメソ孔がもたらす基質移動効率の向上によるものと考えられる。さらに、暗所と可視光照射下の活性から表面プラズモン共鳴による活性向上率を求めた結果、銀/マクロメソポーラスシリカ触媒が最も高い活性向上率を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該研究は機能性を付与した多孔質担体とプラズモンナノ粒子を組み合わせた新規複合型光触媒の開発・応用を目的としている。本年度は担体の形状とプラズモン触媒の活性との関係を調査するために、シリカ担体と銀ナノ粒子を複合化したプラズモン触媒を合成し、その構造解析と触媒性能評価を行った。 テンプレート法を用いてマクロポーラスシリカ、メソポーラスシリカ、マクロメソポーラスシリカ、バルクシリカを合成し、マイクロ波照射によるアルコール還元を行い、銀ナノ粒子を担持した。調製した触媒は走査型電子顕微鏡観察、透過型電子顕微鏡観察、X線回折によってその構造が同定され、また紫外可視光吸収分光測定によって表面プラズモン共鳴に由来する可視光吸収の発現を確認した。 調製した触媒を環境汚染物質である4-ニトロフェノールの還元反応に応用し、暗所下と可視光照射下における触媒活性を調査した。暗所下・可視光照射下の両方において、マクロメソポーラスシリカを担体とした銀プラズモン触媒はその他の担体を用いた場合と比較して最も高い活性を示した。暗所下における高い活性は隣接するマクロ孔間を繋ぐメソ孔がもたらす基質移動効率の向上に起因すると考えられる。さらに、銀/マクロメソポーラスシリカ触媒は、暗所と可視光照射下の活性差から求めた表面プラズモン共鳴による活性向上率も最も高くなることが分かった。以上の結果から、マクロメソポーラスシリカは担体として有用であることが示唆された。 当該年度において1報の論文を投稿したほか、国内外で6件の学会発表を行い、そのうち3件で講演賞・ポスター賞を受賞した。以上の研究結果から、当該研究は現在まで当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究では、多孔体の高次構造あるいは組成を制御して異なる機能を付与した担体とプラズモンナノ粒子を組み合わせた新規複合型光触媒の開発・応用を目的としている。これまでの研究で得られた知見・材料をもとに、次年度は以下のように研究を発展させていく。 プラズモン触媒の活性向上は、多孔質担体の利用による反応場の構築に加えて、表面プラズモン共鳴によって生成した共鳴励起電子の寿命を延ばすことによって実現可能であると考えられる。シリカを担体として用いた場合は共鳴励起電子の寿命を延ばすことが困難であるが、電子伝導性を示す酸化物半導体を担体とすることで可能になる。したがって、次年度は酸化物半導体を担体としたプラズモン触媒の合成を試みる。担体として、さまざまな形状の合成が可能である酸化チタンを選択する。まずは高い基質拡散性を示すことが報告されている酸化チタンナノチューブを担体としたプラズモン触媒を合成する。担体の多孔質構造がもたらす基質拡散性に加え、銀から酸化チタンへの電子移動に伴う電子寿命の延長によって触媒活性の向上が期待できる。さらに、マクロ孔とメソ孔の組み合わせによって高い基質移動効率を有することが明らかとなったマクロメソポーラス構造の酸化チタン担体の合成に取り組む予定である。 さらに、合成した担体上に形状の異なる銀の担持を試みる。当研究室ではこれまでにナノロッド形状の銀において表面プラズモン共鳴が大きく発現することを見出した。そこで、担体上に担持する銀の形状を変化させ、触媒活性への影響を検討する。 合成した複合型触媒を二酸化炭素の還元反応に応用する。担体による基質拡散性や形状の異なる銀による表面プラズモン共鳴が触媒活性に与える影響を検討する。
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