研究課題/領域番号 |
20J10112
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
堀内 啓佑 神戸大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | アディソン法 / 国庫補助政策 / 不良住宅地区改良法 / レイモンド・アンウィン / 同潤会 / 内田祥三 / 中村寛 / 関一 |
研究実績の概要 |
本研究の最終的な目的は、戦前の日本において住居法の制定に向けた検討がいかになされたのかを解き明かすとともに、そうした一連の検討が日本の住宅政策に与えた影響を考察することにある。初年度には、先進西洋諸国の諸法制のなかでも特に重要な法制として知られる、イギリスのアディソン法(Housing, Town Planning, etc. Act・1919年)に着目し、日本における同法制の摂取と応用の実態の把握を試みた。 研究は一次資料の渉猟と分析にもとづいて進め、東京都公文書館内田祥三文庫を中心に、複数の公文書館や図書館で調査を行った。その成果として、主に「知見の摂取」と「摂取された知見の応用」という二つの側面から、以下のような事実が明らかとなった。 「知見の摂取」という側面では、①関一や内田祥三といった当時の都市住宅政策に関するオピニオン・リーダーが、規範とすべき対象としてアディソン法を評価していたこと、②内田祥三の主導のもとに、アディソン法の法文に加えて、同法にもとづく国庫補助政策の手引書である“Manual on the preparation of State-aided housing schemes”や、不良住宅地区改良政策の手引書である“Manual on unfit houses and unhealthy areas”といった資料が翻訳・公表されていたこと、③内田祥三と師弟関係にあった中村寛が、1920年から翌年にかけて先進西洋諸国の住宅地を視察し、アディソン法立案の中心的存在であったレイモンド・アンウィンと40日程度行動を共にしていたこと、などを明らかにした。 「摂取された知見の応用」という側面では、同潤会の住宅建設事業において、内田祥三や中村寛が中心的役割を果たしていたことに着目し、アディソン法の調査などから得られた知見が同潤会の事業に応用された可能性を検証した。この結果として、同潤会の分譲住宅事業や不良住宅地区改良事業の実施に際して、上述の“Manual”が参照された可能性が高いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一次資料の収集の面では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、特に年度の前半に調査計画や調査方法の変更が求められたが、代替手段の模索などによって、最終的にはほぼ当初の計画通りに資料の収集が完了し、その整理と分析を進めることができた。資料の分析面では、先進西洋諸国からの住居法に関する知見の摂取の状況を明らかにするとともに、その知見の摂取が日本の住宅政策に与えた影響を把握することを目標としていたが、いずれについても十分な成果を得ることができた。したがって、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果として、戦前の日本では、アディソン法をはじめとしたイギリスの住居法に関する知見が積極的に摂取・応用されたことが把握された。より具体的には、イギリスでは都市や住宅地、住宅を計画するための理論が発展したのちに、これが住居法という法制と結びつき、アディソン法の制定と同時期に「マニュアル化」されたと言えるが、日本ではアディソン法の制定の直後頃から内田祥三や中村寛によってこれらの摂取が進められ、さらに、摂取された知見が同潤会の住宅建設事業という形で実践に移されていたことが明らかとなった。 こうした同潤会の住宅建設事業は1920年代から1930年代を中心に展開された。一方、その後の戦時期には住居法案の本格的作成が進められており、この作成にあたって内田や中村が中心的存在となった。このことは、同潤会の住宅建設事業などの実践によって得られた経験が住居法案の作成に影響を与えた可能性を示唆する。このため、第二年度には、初年度と同様に東京都公文書館内田祥三文庫などにおける一次資料調査を実施し、この可能性をより詳しく検証する予定である。 また、第二年度の当初の計画として、当時の住居法研究の際に参照されていた先進西洋諸国の文献資料の重点的収集を目標としていたが、初年度にも“Manual on the preparation of State-aided housing schemes”や“Manual on unfit houses and unhealthy areas”といった重要資料の収集を進めることができており、第二年度にも引き続きその収集を進める。
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