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2020 年度 実績報告書

重力的粒子生成が引き起こす宇宙論的効果の研究

研究課題

研究課題/領域番号 20J10176
研究機関東京大学

研究代表者

羽柴 聡一朗  東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2022-03-31
キーワード粒子生成 / 真空崩壊 / トンネル効果 / ストークス現象
研究実績の概要

本年度は、真空崩壊に伴う粒子生成について扱った。真空崩壊とは、ヒッグス場のような宇宙を満たしている背景場が、トンネル効果により値を急激に変化させる現象である。真空崩壊が生じる時、背景場と結合している粒子はその有効質量が急激に変化することになるため、真空状態(=粒子が1個も存在しない状態)が変化して粒子数が不可避的に変化するのである。この粒子生成を解析するためには、まずトンネル効果による背景場の変化を追う必要がある。これについては、トンネル効果を解析する手法の一つとして近年提唱されている実時間形式を用いることで、真空崩壊に伴ってどの程度の粒子生成が生じるかを計算した。結論としては、期待されていたほどの粒子生成は起こらないことが判明したが、この研究は実時間形式という手法に対して粒子生成という新しい観点からその妥当性を検証するという点においても意義がある。
また、上述の研究を行うにあたり、粒子生成が数学的にはストークス現象と呼ばれるものと等価であることを利用し、ストークス現象についての定理を用いることで粒子数を解析的に評価した。このような手法は宇宙論の分野においてはまだほとんど知られていなかったため、この評価手法そのものについて論ずる論文も出版している。論文にある評価手法を用いることにより、数値計算に頼らざるを得なかったような複雑な粒子生成の計算、例えばプレヒーティング(preheating)においても適切な近似の下で解析解が与えられるようになるため、この結果は極めて有用である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初計画においては本年度中にシカゴ大学に滞在し、重力的粒子生成についてKolb教授と共同研究を行う予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響によりシカゴ大学が海外からの研究滞在を認めなくなってしまったため、この共同研究の計画については進捗が見られなかった。

今後の研究の推進方策

翌年度、アメリカ合衆国における新型コロナウイルス感染症の状況が好転し次第渡米し、当初計画通り重力的粒子生成についての共同研究を行う予定である。
また、クインテッセンシャル・インフレーションに基づいた宇宙再加熱過程の解析については、シュウィンガー効果を用いたモデルの検討を進める予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Particle production induced by vacuum decay in real time dynamics2021

    • 著者名/発表者名
      Hashiba Soichiro、Yamada Yusuke、Yokoyama Jun’ichi
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 103 ページ: 045006

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.103.045006

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Artifact-less coded aperture imaging in the x-ray band with multiple different random patterns2020

    • 著者名/発表者名
      Kasuga Tomoaki、Odaka Hirokazu、Hatauchi Kosuke、Takashima Satoshi、Tamba Tsubasa、Aizawa Yuki、Hashiba Soichiro、Bamba Aya、Zhou Yuanhui、Tamagawa Toru
    • 雑誌名

      Journal of Astronomical Telescopes, Instruments, and Systems

      巻: 6 ページ: 035002

    • DOI

      10.1117/1.jatis.6.3.035002

    • 査読あり
  • [学会発表] 運動項優勢期におけるシュウィンガー効果による再加熱過程2021

    • 著者名/発表者名
      羽柴聡一朗、中塚洋佑、鎌田耕平
    • 学会等名
      日本物理学会第76回年次大会
  • [学会発表] Particle production induced by vacuum decay in real time formalism2020

    • 著者名/発表者名
      Hashiba Soichiro
    • 学会等名
      RESCEU Summer School 2020
  • [学会発表] 右巻きニュートリノの重力的生成によるバリオン数と暗黒物質の生成2020

    • 著者名/発表者名
      羽柴聡一朗
    • 学会等名
      基研研究会 素粒子物理学の進展2020
  • [学会発表] 真空崩壊に伴う粒子生成とその帰結2020

    • 著者名/発表者名
      羽柴聡一朗、山田悠介、横山順一
    • 学会等名
      日本物理学会2020年秋季大会

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公開日: 2022-12-28  

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