本年度は、アメリカ合衆国ライス大学のAndrew助教授との国際共同研究を通して、ストークス現象を用いたフェルミオンの重力的粒子生成の解析を行なった。ストークス現象とは微分方程式の解が示す振る舞いのことであり、数学的には粒子生成と等価である。このため、ストークス現象についての数学的定理を応用することで、粒子生成を解析的に評価することが可能になるのである。これにより、数値計算によってその発生が示唆されていた現象、スピン3/2のフェルミオンがインフレーション終了後などに爆発的に生成する破局的生成(Catastrophic production)と呼ばれる現象の発生を、解析的に示すことに成功した。この研究結果については近日論文として公開される予定である。 また、クインテッセンシャル・インフレーションに基づいた宇宙再加熱過程の解析について、重力的粒子生成とはまた違う切り口として、シュウィンガー効果を用いたモデルの構築も新たに行った。クインテッセンシャル・インフレーションが擬スカラー場によって引き起こされる場合、インフレーション終了後にインフラトン(今の場合、擬スカラー)が転がり続ける段階においてヘリカルな電磁場が生じる。この時生成した電場によって更にシュウィンガー効果が引き起こされることで荷電粒子が生成されて熱化されれば、宇宙再加熱過程が実現出来るということになる。シュウィンガー効果によって生成された荷電粒子自体も電磁場を生成するため解析は一般的に極めて困難だが、本研究では適当な近似の下でこのバックリアクションを取り込んで解析的評価を行い、現在の観測結果を矛盾無く説明し得ることを示した。
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