現在までに、テアニン生合成酵素遺伝子において3つのホモログ (CsTS1、CsTS2、CsTSI) の存在と定性的な酵素活性が報告されている.これまでに我々は、CsTSIのみがテアニン集積と同調した発現パターンを有すことを同定したが、各ホモログの貢献度は未だ明白でない.そこでまず、安定的な形質転換系が構築されていないチャにおいて、Rhizobium rhizogenes (R. rhizogenes) を用いた毛状根系の構築を試みた.チャ幼苗の地上部基部をR. rhizogenesの感染部位に供すin planta法を用いた形質転換実験において、毛状根の形成が確認された.現在、当手法を用いて、TSs過剰発現個体ならびに発現抑制個体の作出に着手しており、これら組換え個体の表現型試験により、チャにおけるTSsの生理的役割を検証する予定である. 水耕栽培したチャ36系統の若根中のテアニンとその前駆体物質の含量評価を行ったところ、顕著な系統間差異が観察された.また、テアニン含量と両前駆体物質含量の間に正の相関関係が示された.つまり,遺伝的にテアニンの生合成能は前駆体物質の代謝と協調している影響が大きいことが示唆された.根内テアニン生合成能の系統間差とTSsの関係を明らかにするために,まず,根内テアニン含量の代表的な上位・下位系統を対象にTSsの発現量を比較したところ,両者の発現量に差は見られなかった.そこで,両系統におけるTSsのアミノ酸配列を比較したところ,数多くのハプロタイプが観察された.つまり,根内テアニン含量の系統間差の一つの原因としては,TSsの発現量多型ではなく,アミノ酸配列多型によるタンパク機能の差異が影響している可能性が示唆された.ハプロタイプ毎に、タンパク質発現用のコンストラクトの作出も完了し、in vitro活性試験を随時進める予定である.
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