研究課題/領域番号 |
20J10183
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤本 花音 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 視覚誘導性自己運動感覚 / ベクション / 身体姿勢 / 視野 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,自己運動知覚における地面及び身体の役割と関係性を明らかにすることであった.下視野の視覚運動 (オプティックフロー)が上視野より強い自己運動感覚 (ベクション)を誘発することが先行研究で報告されているが、これは地面が自己運動の静止参照枠として優れるためであると考えられてきた。しかしながら、ヒトの知覚上で、地面の存在が環境座標系や身体座標系等の、いずれの座標系で定義されるかは明らかではない。この問題は、先行研究では直立姿勢で実験を実施したことにより、複数の座標系が概ね一致し、それぞれの座標系の影響が特定できないことが原因であった。 本年度は,自己運動知覚における地面と身体それぞれの役割と相互作用を明らかにするため,側臥位または座位姿勢で半視野に視覚運動を呈示した時のベクションを測定する実験を実施した.その結果,身体姿勢によらず,身体座標軸上の下視野にオプティックフローが呈示された場合に上視野呈示に比べてベクションが促進された.この結果は,ベクションの下視野優位性が身体座標軸に基づくことを示唆する.その一方で,環境座標軸上の地面の位置と身体軸上の下視野が一致する座位姿勢に比べ,両社が一致しない側臥位姿勢の方が,下視野呈示下のベクション評定値が低かった.この結果からベクションの下視野優位性における環境座標軸の影響も示され,ベクションの下視野優位性には複数の座標系が関与していることが示唆された. また,本年度はCOVID-19感染症による研究機関の活動制限により実験の一時中断が生じたため,中断期間中は論文の執筆・投稿を集中的に行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19感染症による研究機関の活動制限により,当初予定していた実験を全て完了することができなかった.しかしながら,活動制限期間にこれまでの実験結果を論文化し,2本の論文を出版した.今後は感染症ガイドラインを遵守しながら通常の研究活動に復帰する取り組みを行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では,生態学的妥当性を高めるため,各視野に対応したテクスチャ構造を有するオプティックフロー刺激を提示していた.このような各視野特有のテクスチャ構造が,自己運動知覚における下視野優位性の一要因である可能性が考えられる.今後の研究計画として、視野の位置だけでなく視覚刺激のテクスチャ特徴にも着目し,「地面らしい」テクスチャがベクション生起に与える影響の検討を計画している。
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