ホログラフィは3次元情報を忠実に記録・再生できる手法であり、次世代の3次元映像提示手法として注目を集めている。電子化されたホログラフィを特に電子ホログラフィと呼ぶ。立体視が可能として、現在よく利用されている方式に両眼視差方式がある。システム開発が容易という大きな利点を有しているが、3次元情報を忠実に再現することはできず、長時間の利用により、吐き気や眠気といった3D酔いが発生する。また、子供が使用することで視覚障害が発生する可能性が指摘されるなど、3次元ディスプレイ技術応用への大きな障壁となっている。 電子ホログラフィでは、計算機によって3次元情報が記録された2次元的な干渉縞であるComputer-Generated Holograms (CGHs) の計算を行う。CGHをLiquid Crystal Display (LCD) などの液晶ディスプレイに表示し,画面表示を高速に切り替えることで動画の3次元再生も可能である。究極の3次元映像提示手法とも呼ばれる電子ホログラフィであるが、CGHの計算に必要な計算コストを一因として実用へは至っていない。 本研究では、読み書き可能なField Programmable Gate Array(FPGA)を使用し、電子ホログラフィ計算に特化した専用計算回路を開発することで、計算の超高速化を目指した。特に、CPUとFPGAをワンチップに搭載したSystem-on-a-chip(SoC)を利用することで、小型で高速なシステム開発を目指した。その結果、組み込み機器向けのGPUと比べ190倍、商用のPC(CPU)と比べ131倍の高速化を達成した。動画として重要なフレームレートは19 fpsである。一般的に10 fps以上あればチラつきのない動画として視聴可能とされており、電子ホログラフィを用いたヘッドマウントディスプレイ実装に必要十分な性能を達成した。
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