研究課題/領域番号 |
20J10229
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小野 由美子 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
|
キーワード | スフィンゴミエリン / 上皮細胞 / Lysenin / 細胞内輸送 / アピカル膜 / 形質膜 / 浸透圧ストレス / mTORC2 |
研究実績の概要 |
消化管や腎臓尿細管の管腔を流れる液体の浸透圧は絶えず変動するため、上皮細胞は常に浸透圧ストレスに曝露されている。低浸透圧溶液に曝されると、細胞に水が流入し、容積が増大した結果、細胞膜張力が上昇する。この時、膜張力の上昇を感知し、形質膜に膜を供給しない限り、細胞は破裂して死んでしまう。こうした事態を回避するため、カベオラのような膜の陥入構造の伸展や小胞輸送によって細胞膜が供給され、形質膜張力は緩衝されると考えられる。しかしながら、その分子メカニズムには未解明な点が多い。 本研究において、上皮細胞が低浸透圧溶液に曝されると、アピカル膜が選択的に伸展することを見出した。そこで、アピカル膜を構成する主要な脂質であるスフィンゴミエリンに特異的に結合するシマミミズ由来タンパク質Lyseninを用いて、スフィンゴミエリンが形質膜へ小胞輸送される過程を可視化するプローブを作出した。このプローブを用いてスフィンゴミエリンのアピカル膜輸送の制御機構の探索を行った。その結果、低浸透圧ストレスによって活性化されるmammalian target of rapamycin complex (mTOR複合体) が、アピカル膜へのスフィンゴミエリンの輸送を亢進させて膜を供給することにより、低浸透圧ストレスによる細胞死を回避していることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は、mTORC2経路の下流でアピカル膜へのスフィンゴミエリンの輸送を制御している分子の探索を行なった。極性タンパク質や小胞輸送に関わるタンパク質との関連を検討したが、実行分子の同定には至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、mTORC2経路とスフィンゴミエリンの輸送を制御する因子の同定と解析を行う。
|