研究課題/領域番号 |
20J10242
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
古賀 由希菜マーガレット お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 滴 / 融合 / スケーリング則 |
研究実績の概要 |
本研究では、擬二次元下において液中液滴の融合に関する研究を行い、擬二次元における液中液滴の融合現象の物理を包括的に理解することを目的としている。博士後期課程1年次までに、ヘレショウセルを用いた擬二次元空間で外部液体の粘度を非常に高くした実験を行い、融合の初期でネック(架橋部分)の成長速度が外部液体・液滴どちらの粘度にも依らない慣性領域があるということを発見した。これを受けて、令和2年度は、実験の面では、(1)液滴・外部液体の粘度、(2)液滴と外部液体の界面張力、(3)融合直前の液滴-液槽間の距離(ネックの高さ)、の3種類のパラメータに着目して研究を進めた。 (1)粘度 について、外部にPDMSというシリコンオイルを、液滴にはグリセリン水溶液を用いることで、外部液体の粘度は3000~10000 cSt、液滴の粘度は20~794 cStと幅広く変化させた実験を行った。これらの条件の中から慣性領域が成り立つ範囲を特定することができた。(2)界面張力 については、懸滴法という計測方法を用い、液滴-液槽間の界面張力を測定することに成功した。また、グリセリン液滴にエタノールを混合させることで、この界面張力を下げた実験も行った。(3)液滴-液槽間の距離 は、自然発生的にこの距離が変化していることがわかったため、それぞれの実験データの見直しをし、画像解析ソフトを用いてこの距離の計測をした。この距離の変化は静電気や液滴の注入速度に依ると考えられるが、ネックの成長速度のこのパラメータへの依存性をさらに詳しく検討するために、今年度はセルの上下から電圧を印加し、液滴-液槽間の距離をコントロールした実験を行いたい。 さらに理論面ではスケーリング則を用いて新たに理論式を導出した。上記のパラメータに加えて液滴の密度を計測し、実験結果と理論式の整合性を確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス蔓延防止のため、緊急事態宣言等が発出され、大学がおよそ2か月ほど閉鎖されたが、当初はリモートワーク用の環境が整っていなかったため、しばらく解析法などの勉強を進める期間が続いた。その後リモートワークのための環境が整い、制限がありつつも登校することができたため、実験を進めつつ、解析はPCがあれば場所を問わず進められるようになった。この環境の変化により、今まで以上にデータと向き合う時間が増え、速度解析の方法の見直しや、画像解析ソフトを用いた長さの計測なども時間をかけて行うことができた。結果として、これまでに難航していた理論式と実験の整合性の確認を大きく進めることができた。 ただし、本来、令和2年度中にセルの上下から電圧を印加した実験を行う予定であったが、上記の大学の閉鎖があり、実験に割く時間が大幅に減ってしまい、準備段階まで進めるにとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
理論式と実験結果の整合性をより正確に検討するため、高電圧装置を用いてセルの上下から電圧を印加することで、液滴-液槽間の距離を変化させた実験を行う。 また、融合の初期だけでなく、同条件下での融合後期におけるネックの動力学に関する研究を進める。実験の面では融合初期と同様、液滴と外部液体の粘度、液滴と外部液体間の界面張力等のパラメータを変化させた実験を、さらにセルの厚みを薄くして行う。これらの結果を取りまとめることで、融合初期領域と後期領域それぞれで成り立つスケーリング則とそのクロスオーバー条件を示す。 さらに、これらに加え、融合の"超"初期に関しても研究を進めることで、現条件下での液滴融合に関する理解を深める。この領域ではネックの成長速度と液滴の曲率半径の関連が示唆されているが、未だ実験では示されていない。顕微鏡レンズを用いて強拡大かつ高速(50,000fps以上)の撮影を行い、今まで視覚的にとらえられていなかった領域へアプローチする。
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