CT画像を用いて骨格筋の密度を測定することで筋肉の質を相対的に評価する手法が注目されている.本研究では,心血管疾患患者の骨格筋密度をCT画像を用いて縦断的に評価することで,骨格筋の密度に着目した急性期治療に伴う身体的デコンディショニング評価の有用性について検証した. 対象は2018年9月から2020年8月までに入院した大血管疾患患者のうち,急性期治療前後に腹部横断CT像を撮影した123名とした.骨格筋の密度は腹部全体と,腹部横断CT像で確認できる各骨格筋を8つ(腹直筋,内腹斜筋,外腹斜筋,大腰筋,腰方形筋,広背筋,棘筋,脊柱起立筋)に分類して測定した.解析は一般化線形モデルを使用し,ランダム効果は患者とした.また,入院中の心臓リハビリテーションによる身体機能の回復を,Short Physical Performance Battery (SPPB) を用いて評価し,重回帰分析にて骨格筋密度の変化との関連を検証した. 検証の結果,急性期治療後に骨格筋の密度は有意に低下することが示された.この傾向は全ての骨格筋で同様であり,骨格筋の部位による交互作用は見られなかった(P=0.998).急性期治療中の骨格筋の密度の低下の程度が大きいと,入院期間中における心臓リハビリテーションによる身体機能の回復(SPPBの改善)が乏しい可能性が示された(標準化回帰係数:0.103,P=0.007). これらの結果から,急性期治療に伴う身体的デコンディショニングは,骨格筋の密度を測定することで相対的に評価することができる可能性が示唆された.
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