CT画像を用いて骨格筋の密度を測定することで筋肉の質を相対的に評価する手法が注目されている.本研究では,心血管疾患患者の骨格筋密度をCT画像を用いて縦断的に評価することで,急性期治療後における心臓リハビリテーションによる骨格筋の密度の可逆性について検証を行った. 対象は2018年9月から2020年8月までに入院した大血管疾患患者のうち,急性期治療前後及び治療半年後に腹部横断CT像を撮影した99名とした.骨格筋の密度は腹部全体と,腹部横断面で確認できる最も大きな抗重力筋として脊柱起立筋を測定した.解析は一般化線形モデルを使用し,ランダム効果は患者とした.また,CT画像の測定誤差(SEM)から臨床的に有用な変化量(MDC)を算出し,心臓リハビリテーション前後におけるMDC以上の変化の割合を算出した. 一般化線形モデルを用いた検証の結果,急性期治療後に一貫して低下した骨格筋の密度は,治療後半年で改善する傾向にあることが示された.しかしながら,心臓リハビリテーションを完遂しなかった症例では十分な改善が得られず,急性期治療前と比較して治療後半年時点にて有意に低値を示した.これらの傾向は脊柱起立筋の密度でも同様であり,外来心臓リハビリテーションを完遂した症例では急性期治療直後と比較して有意に改善した.急性期治療後から治療後半年までにMDC以上の改善を示した症例は全症例の約1/3であった. これらの結果から,治療後半年で骨格筋の密度は改善する可能性があり,包括的なリハビリテーションを継続することでその効果を促進する可能性が示唆された.
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