移植片対宿主病(GVHD)において、非侵襲性の血中バイオマーカー確立は急務であるが、現時点でGVHDにおける有用なバイオマーカーは確立されていない。 そこで、自治医科大学附属さいたま医療センターで初回同種造血幹細胞移植を行い、180日以上無病生存し、血液検体保存に同意をいただいた症例を対象とした。移植後180日におけるバイオマーカー候補の各非再発死亡予測能や、検体採取時の臨床症状などの関連を解析した。さらに、剖検症例の蛍光免疫染色を行うことで、候補バイオマーカータンパク質の各臓器における発現の有無を評価した。Discovery cohortにおいてROC(Receiver Operating Characteristic)曲線解析で算出したカットオフを用いた結果、Wisteria Floribunda Agglutinin (WFA)+- Mac-2 Binding Protein (M2BP)(WFA+-M2BP : M2BPGi)がすべてのコホートで有意に非再発死亡と相関し、慢性GVHDの重症度や肝臓への臓器浸潤と相関を認めた一方で、肺GVHDとの関連は認めなかった。さらに剖検症例で蛍光免疫染色を行ったところ、WFA+-M2BP陽性マクロファージが、活動性の高いGVHDを有する肝臓でより多く発現していることが明らかとなった。 以上より、M2BPGiが肝臓特異的なGVHDの強力なバイオマーカーであることが示された。さらに、糖鎖解析技術が臓器特異的なGVHDバイオマーカー探索において大きな可能性を秘めていることが示唆された。
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