宇宙線と呼ばれる高エネルギー放射線の加速機構を明らかにすることは高エネルギー天文学における重要な課題の一つである。これまで銀河宇宙線は超新星残骸の衝撃波によって加速されていると考えられてきたが、未解決の問題点も多く残っている。そこで理論的アプローチからの宇宙線加速計算が必要である。我々は、(1)現実的な環境下における超新星残骸における宇宙線加速と、(2)スーパーバブルにおける宇宙線加速を計算した。 まず、超新星爆発を起こす親星の恒星進化を考慮した、各進化段階における星風が作る星周環境を用意し、その中で起こる超新星爆発による宇宙線加速とそれに伴う非熱的放射を計算した。その結果II型超新星残骸の衝撃波が、赤色超巨星の時に出した濃い星風中を進行する時間では、宇宙線加速が活発で多波長で光る。それに対し、主系列星の時に出した高速の星風が非常に薄いバブルを作り、その中を走る間は宇宙線加速が抑制され多波長で光らないことが分かった。逆にIb/c型超新星残骸では、最初ウォルフ・ライエ星の時に作った薄いバブル中を膨張するため非常に暗いが、その後星風によって掃き集められたシェルに衝突し、再び増光する現象を見つけた。 次に、スーパーバブル内では複数の超新星爆発が起こっており、これらを模して超新星残骸内で超新星爆発が起きた場合の宇宙線加速計算を行った。その結果、複数回目の爆発において、爆発の初期段階で衝撃波速度が高いにも関わらず、宇宙線加速ができない領域が存在することを新たに発見した。これは、スーパーバブル内部の超新星残骸と星風の流体的な相互作用によって、高温高密度領域が形成され、衝撃波加速にとって非効率な環境となるためであることもわかった。また、超新星残骸内部の加速においては、高温低密度な環境のため、加速は可能であるが最高エネルギーが稼ぐことができなく、低エネルギーの宇宙線も加速されることが分かった。
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