研究実績の概要 |
前年度の研究結果により、Cngc2欠損変異体(cngc2)は花粉管の発芽が野生型よりも早く、花粉管の胚珠への到達率が高く、花粉柱頭反応が促進されている可能性が示唆された。また、糖輸送に関わる遺伝子発現が低下していたこと、さらに生殖器官や茎で可溶性糖の含有量が高くなっていたことから、「糖代謝の変化が花粉柱頭反応の促進に関わっている」可能性がある。 まず、cngc2で遺伝子発現の低下が見られたSuc1, およびSuc5の欠損変異体(suc1, suc5)を用いて、生殖成長期の生育特性を調査した。その結果、suc1は野生型と同様の生育特性を示したものの、suc5は生殖成長期移行後18日目の長角果の割合が63%と高く、cngc2と似た生育特性を示した。また、糖代謝に関する遺伝子発現は、cngc2,suc5ともに花粉に糖を輸送するトランスポーターとして働くSweet8の遺伝子発現が、WTと比較して有意に高かった。花粉中の可溶性糖は、ROS生成を活性化させることで、花粉水和反応を促進させる可能性がある。cngc2もsuc5も花粉の糖トランスポーターであるsweet8の遺伝子発現が増加していたことから、花粉中の糖の含有量が増えたことによってROS含有量が増加し、それが花粉水和反応を促進したことで花粉管の発芽が促進されたというメカニズムが示唆された。
次に、cngc2の生殖成長期移行後6日目、12日目の植物を用いて、茎頂分裂組織を含む部位をサンプリングし、幹細胞の維持に関わる遺伝子であるWus遺伝子の組織特異的発現解析を行った。6日目のcngc2の茎頂分裂組織におけるWusの発現はWTよりも高かったものの、12日目ではWTよりも低い傾向が見られた。従って、cngc2は生殖成長期の後半で幹細胞の維持ができなくなり、蕾や花に分化する数が減少するという可能性が示唆された。
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