本研究課題の目的は、自然に形成される多角形パターンについて、物質の詳細に依存しない幾何共通則を導出することである。 最終年度は、マスクメロンの表面に現れる網目パターンの解析を行い、研究成果を論文にまとめた。マスクメロンの網目は、果実の成長過程で膨張する果肉と固化した表皮との力学的な不釣り合いに起因する果皮の断片化によって生じる。本研究では、網目に囲まれた微細な表皮片の面積を画像解析により統計的に分析し、メロンの品種に依存しない共通則の導出を試みた。その結果、断片面積の分布が品種に依らず特定の確率密度関数に従い、脆性材料の破壊挙動の理論的議論と整合的であることがわかった。このことは、断片面積の確率分布を支配する共通法則を示唆している。 また、柱状節理に関しては、実際の露頭表面に現れる多角形形状が、破壊力学的に理想的な多角形形状からどれほど揺らいでいるのか統計解析によって精査し、この成果を国際的な学術専門誌(査読付)へ原著論文として公表した。意外にも、岩石が示す幾何揺らぎは岩の化学組成や溶岩の冷却条件などの要因から影響を受けない普遍的な現象であることが判明した。さらに、幾何揺らぎが溶岩の冷却表面から内部へ向かって変動していく様子を、ボロノイ分割の手法を用いた数値シミュレーションで再現した。それによって、柱状節理の形成過程が等温分布と亀裂伝播の連成によって説明できるという既存の仮説を支持する結果を得た。
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