研究課題/領域番号 |
20J10391
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
日野 陽太 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | ニュートリノ / 液体シンチレーター |
研究実績の概要 |
(1)高い波形弁別能力を持った液体シンチレーターの開発: 添加するDIN(2,7-diisopropylnaphthalene)の素材として、有機液体シンチレーターに混合しやすい液状の候補を選定し、最終的にDINの純度99%以上を持つEljen社のEJ-309を採用した。このEJ-309を配合したガドリニウム(Gd)入り液体シンチレーターのサンプルを作成し、それぞれの透過率、発光量、波形弁別(PSD)能力を測定して最適な混合量を調べた。透過率についてはDINの混合量に対して大きく変化はなく、発光量は5%、10%含有サンプル共に0%含有サンプル(= 通常のGd入り液体シンチレーター)に対して20%程度向上した。またPSD能力は中性子除去率99%における信号取得効率によって評価し、5%サンプルは信号取得効率88.2%、10%サンプルは94.5%となった。これらの基礎測定を基にシミュレーションを行い、ニュートリノ観測領域で信号取得効率99%以上を達成できることを確かめた。また、DIN含有量10%サンプルについて、実際の測定完了に近い大気解放・室温という環境下で、透過率、発光量、PSD能力を約半年間に渡り定期的に測定した。その結果、有意な変化は認められず、要求されている安定性を満足していることを示唆している。1トン分のDIN含有Gd入り液体シンチレーターの製作については、現状の設備が人手を要するため、このコロナ禍においては必要人員を削減するような改良が必要となっている。そのための設計を今後行なっていく予定である。 (2)校正装置の開発: 現在、試作機の設計・製作を行っている。線源配置位置の精度向上のためジャイロセンサーの導入を予定している。センサー用の配線を液体シンチレーターと接触しないような機構の設計を追加で行った上で、液体中での試験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
J-PARC MLFにおけるステライルニュートリの探索実験JSNS2の実験スケジュールの遅れにより、前年度と今年度前半に予定していた研究開発がずれ込むことになった。また、コロナ禍の影響により研究活動に大きく制限があったため、予定より研究の進行速度を落とさざるを得なかった。一方で、液体シンチレーターの開発や校正装置の基礎設計などの主要部分は完了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでで、検出器の主要な要素である液体シンチレーターを開発した。今後は検出器の建設に向けて、DIN添加Gd入り液体シンチレーターの量産方法の確立とシステム構築を進め、早急に検出器を組み上げることを目指す。J-PARCへの検出器の設置に向けて現実的に設置可能な場所の選定し、現場と連携して必要な安全、法令遵守の対策を取れるようにする。 また、設計した3次元線源配置校正装置のテスト機を制作し、位置精度や再現性の検証を行う。校正装置はマイコンとステッピングモーターにより制御を行うため、任意の位置に安全に移動できる様な制御ソフトウェアの構築も行う。
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