研究課題/領域番号 |
20J10471
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山北 絵理 九州大学, 農学研究院, 特別研究員(PD) (10929607)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | コケ / 岩石 / 風化 / 元素溶脱 |
研究実績の概要 |
本年度は、コケ・石灰岩境界のDNAシーケンス分析を行った。その結果、当初予想していた鉄酸化細菌は存在せず、コケの有無によって石灰岩表面の細菌叢の種に違いはみられないことがわかった。ただし、コケが生えている石灰岩表面では、細菌の量が多い傾向があることが示唆された。 先行研究で報告されている、コケ中や生育基物中の元素濃度についての文献値を総括した。さらにSEM-EDSを用いて測定した、石灰岩上に生えるヤマトキヌタゴケの葉中の元素濃度も加えたデータについて解析を行った。生育基物が岩石であるか土であるかを場合分けし、コケ中と基物中の元素量の相関を求めたところ、岩石上に生えるコケでは、これらの元素を多く含むものがあり、正の相関が示された。一方で土壌上に生えるコケでは元素量は低く相関がみられなかった。土壌と同じ濃度範囲で解析した場合にも、岩石上のコケ中のカルシウム量は正の相関を示すことがわかった。以上の内容の一部を日本生態学会でポスター発表した。 コケは土壌のない岩石上に直接生育することができるが、全てのコケが岩石上に生育できるわけではなく、種によって好む岩石が異なることが知られている。しかし、その選択性の要因は明らかになっていない。本研究では、鉄を多く含む基物上を好んで生息するイワマセンボンゴケと銅を好む銅ゴケを分析した。これらのコケ中ではホンモンジゴケ中ではCuが高濃度に蓄積しているのに対し、イワマセンボンゴケ中ではFeが高濃度に存在していることが報告されているが、イワマセンボンゴケ中のFe濃度が高い要因は解明されていない。そこで本研究では、ホンモンジゴケとイワマセンボンゴケの可視光スペクトルを測定し、クロロフィルの形態について考察を行った。さらに、それぞれのコケの葉の元素分布を低真空SEM-EDXを用いて測定した。これらの分析結果をまとめ、日本蘚苔類学会にてポスター発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では実験室内で栽培を行ったコケを分析する予定であったが、より大きく基物の影響を受けていると考えられるコケサンプルを持ちいて分析を行う事ができた。比較対照としてすでに植物体中の銅の蓄積が詳細に調べられている銅ゴケを分析することによって、イワマセンボンゴケでの測定結果を評価する正しく評価することができたと考えている。 栽培実験についても、準備が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまで行ってきた低真空SEM-EDX分析に比べてより詳細な分析を行う事ができる高真空での分析に取り組んで行きたい。そのために、適切なサンプルの前処理を行う必要がある。この分析によって、コケが生育を阻害する元素をどのように体内に貯蓄しているかが、より詳細に明らかになると期待される。
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