研究課題/領域番号 |
20J10486
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
金 根佑 北海道大学, 工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 固液界面エネルギーの異方性 / 凝固組織の形態 / フェーズフイールド・シミュレーション / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,固液界面エネルギーの新規異方性が合金材料の凝固組織の形態に如何なる影響を及ぼすのか,その全容を明らかにすることである.ここで,新規異方性とは固液界面エネルギーの異方性パラメータが合金の溶質濃度に依存して変化することを意味する.本年度には,異方性パラメータを系統的に変化させ,一方向凝固組織の形態変化について調査を行った.その結果、異方性強度によって一方向凝固組織の形態は<100>デンドライト,<110>デンドライト,seaweed組織が形成することが明らかになった.このように成長形態を3種類に分類し形態マップを構築した.さらに,この形態マップが一方向凝固過程の凝固条件,温度勾配と引抜速度にどのように依存するのかについても明らかにした. 一方,現在異方性パラメータは多くの合金系で不明な物性値であり,実験的に測定・推定するのが困難である.本研究では逆解析の視点で,シミュレーションで得られた多様な凝固組織の形態から,その異方性パラメータを推定する方法を構築することを試みた.本研究では固液界面の湾曲率と形状因子の分布を用いて凝固組織の形態の特徴を抽出した.ここで,湾曲率は界面の曲がり具合を表す指標,形状因子は界面の形状を表す指標である.この湾曲率-形状因子の分布(Interfacial shape distribution, ISD)が異方性パラメータによってどのように変化するのか調査し,異方性パラメータによって組織形態とISDが異なることが分かった. 本研究では多様な異方性パラメータで得られた組織形態のISDを機械学習によって学習させ,逆に与えられたISDから異方性パラメータを推定することを試みた. このように凝固シミュレーションと機械学習を組み合わせることで合金の異方性パラメータの推定可能性を示唆する結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の主な目的であった柱状デンドライトの形態マップの調査に取り組み、異方性パラメータによって,<100>柱状デンドライト,<110>柱状デンドライト,seaweed組織が形成することを明らかにした.その結果に基づいて,異方性パラメータの空間内における組織形態の形成領域を特定し,その形成領域の凝固条件依存性についても解明した. さらに,デンドライト組織形態の幾何学的特徴から異方性パラメータを予測するモデルの開発にも取り組み,凝固シミュレーションと機械学習を組み合わせることで,逆解析による異方性パラメータの推定可能性を示唆する結果が得られた. 上記の通り2つの研究課題について進歩があったため,おおむね順調に研究が進んだと判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,一方向凝固シミュレーションから得られた柱状デンドライト組織を対象に異方性パラメータを系統的に変化させ,その形態変化に及ぼす影響について調査を行った.それから,一方向凝固組織の形態マップを構築し温度勾配,引抜速度といった凝固条件依存性についても調査を行った.今後は,それに引き続き異なる分配係数を持つ合金系についても同様の調査を行い,形態マップが合金家にどのように依存しているのかについて解明する.また,上記の形態マップに基づいて,異なる異方性強度をもつ二の晶間,さらに複数の結晶が競合成長する場合の挙動について調査を行う. また,逆解析による異方性パラメータの推定モデルをより高度化し,さらに,一方向凝固及び連続冷却過程で得られた凝固組織を対象とし,異方性パラメータ推定モデルの拡張・構築を試みる.
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