研究課題/領域番号 |
20J10511
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東 直樹 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 高速点火方式レーザー核融合 / プラズマ数値計算 / プラズマ加熱 / 相対論的レーザー・プラズマ相互作用 / 高速電子ビーム / 高速熱拡散 / 高エネルギー密度科学 |
研究実績の概要 |
高速点火方式レーザー核融合における加熱用レーザーを使った物質の加熱機構を明らかにすべく、プラズマ粒子シミュレーションコードを用いた理論的研究を行った。 高速点火方式レーザー核融合の先行研究において、従来の物理モデルの予測を上回るエネルギー効率で爆縮コアプラズマが加熱されたこと、そして、その主な加熱過程が熱拡散過程であることが実験的に示唆された。しかしながら、この実験結果を説明できる物理モデルは存在せず、その加熱機構の詳細は明らかではなかった。 本研究では、クーロン二体衝突過程を考慮した一次元プラズマ粒子シミュレーションを広いパラメータ領域で実行し、熱拡散過程が支配的になる機構やそのパラメータ依存性を説明できる新しい物理モデルを構築した。この物理モデルは、レーザー光吸収領域におけるプラズマの時間発展を考慮することで、高密度プラズマ内部においてピコ秒の時間スケールで高速な熱拡散が生じること、また、その伝播速度が時間によらず一定であることを説明する。 また、10ピコ秒スケールでのレーザープラズマ相互作用による高速電子ビーム発生機構については、ポンデロモーティブスケーリングを超える高速電子の超熱的 成分の増加・減少とレーザープラズマ相互作用面におけるプラズマの噴き出しの有無に相関があることを示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題に関連する共同研究への協力などにより、本研究課題に取り組む時間が当初予定よりも確保できなかったことや、計算コストがかかる詳細なシミュレーションが必要であったこと、広いパラメータ領域で実行されたシミュレーション結果を一貫して説明できるような物理モデルを構築することに難航したことが当初予定から進捗が遅延した主な原因である。しかしながら、並列計算が可能になったことで計算コストは劇的に改善され、検証にかかる時間が大幅に短縮された。さらに、共同研究への協力の中で開発した電子のエネルギー方程式を解く偏微分方程式ソルバーを使うことで、より柔軟に物理モデルの検証が可能となり、難航した物理モデルの構築にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は系の一次元性が担保されず多次元効果が発生しうる状況での高速熱拡散について調べる。多次元効果の候補として、レーザースポット径依存性や磁場の影響などが挙げられる。当初は「課題:自己生成磁場の制御による高速電子誘導の可能性」に取り組む予定であったが、高速熱拡散の研究を進めるうちに、まず高速熱拡散に対する自己生成磁場の影響が自明でないことが分かってきた。当該課題を「課題:高速熱拡散に対する磁場の影響」に変更し、高速熱拡散の多次元効果を調べるために、二次元プラズマ粒子シミュレーションを行う予定。 今年度着手できなかった縮退プラズマ中のエネルギー輸送については、まず超高密度領域計算のためのコード修正とテスト計算を行う予定。
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