高速点火方式レーザー核融合における加熱用レーザーを使った物質の加熱機構を明らかにすべく、プラズマ粒子シミュレーションコードを用いた理論的研究を行った。 高速点火方式レーザー核融合の先行研究において、従来の物理モデルの予測を上回るエネルギー効率で爆縮コアプラズマが加熱されたこと、そして、その主な加熱過程が熱拡散過程であることが実験的に示唆された。しかしながら、この実験結果を説明できる物理モデルは存在せず、その加熱機構の詳細は明らかではなかった。 本研究では、クーロン二体衝突過程を考慮した一次元プラズマ粒子シミュレーションを広いパラメータ領域で実行し、熱拡散過程が支配的になる機構やそのパラメータ依存性を説明できる新しい物理モデルを構築した。この物理モデルは、レーザー光吸収領域におけるプラズマの時間発展を考慮することで、高密度プラズマ内部においてピコ秒の時間スケールで高速な熱拡散が生じること、また、その伝播速度が時間によらず一定であることを説明する。さらに、自己生成磁場の効果も確認すべく大規模並列計算を駆使した二次元シミュレーションも行った。 本研究結果は、相対論的高強度レーザー光を用いた固体加熱や高速点火方式レーザー核融合に対して、「高速熱拡散」という新しい物理的描像をもたらした。構築した新しい物理モデルは、今後の実験デザインに対して指針を提示するものであり、将来の核融合発電に向けた研究開発に資する。 また、10ピコ秒スケールでのレーザープラズマ相互作用による高速電子ビーム発生機構については、ポンデロモーティブスケーリングを超える高速電子の超熱的成分の増加・減少とレーザープラズマ相互作用面におけるプラズマの噴き出しの有無に相関があることを示唆する結果を得た。 縮退プラズマ中のエネルギー輸送については、超高密度領域計算のためのコード修正とテスト計算を行った。
|