研究実績の概要 |
本研究は直鎖状ユビキチン鎖生成酵素 (LUBAC) が正常造血と骨髄性白血病に及ぼす影響を検討し、造血不全の病態解明や骨髄性白血病における新規治療標的の可能性を探索することを目的とした。 正常造血への影響を評価するため、まず野生型マウス骨髄細胞において、LUBAC構成要素 (Hoip, Hoil1l, Sharpin) が発現していることを確認した。続いてLUBACの酵素活性中心を担うHoipのコンディショナルノックアウトマウスを用いた。Hoip欠損は成体マウスの造血を抑制し、造血幹細胞のin vitroでのコロニー形成能低下、競合移植実験でのキメリズム低下に寄与した。これらの結果からLUBAC活性は成体型造血の維持や造血幹細胞の機能に必要であることが示された。 続いて骨髄性白血病への影響を評価した。骨髄性白血病細胞でもLUBAC構成要素が広範に発現していることを確認した。続いてマウスの骨髄細胞に特定のがん誘導遺伝子を導入しマウス骨髄性白血病モデルを構築した。このモデルにおいて、Hoip欠損はコロニー形成能の低下、in vivoでの生存延長、骨髄・脾臓における腫瘍量の減少、IκBα発現亢進、リン酸化p65の発現低下、アポトーシスの増加に寄与していた。よって、LUBACがNF-κB経路とアポトーシスの制御を介して、骨髄性白血病の進展に関わることが示唆された。さらに、LUBAC阻害物質は成体マウスの正常造血を一時的に阻害したのに対し、マウス骨髄性白血病モデルの生存を有意に延長し、患者由来AML細胞の異種移植モデルの腫瘍量も有意に減少させた。 これらの結果から、LUBAC活性は成体型造血、骨髄性白血病のいずれにも必要であることが示唆され、LUBAC阻害の感受性が骨髄性白血病でより高いことからLUBACが骨髄性白血病の治療標的となる可能性も示唆された。
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