研究課題/領域番号 |
20J10567
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
前澤 誠希 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 地方病性牛伝染性リンパ腫 / EBL / 牛伝染性リンパ腫ウイルス / BLV / DNAメチル化 / 若齢牛 / 早期発症 |
研究実績の概要 |
本研究は3歳齢未満の若齢牛における地方病性牛伝染性リンパ腫(enzootic bovine leukosis: EBL)発症機序解明を目的とし、骨形成タンパク質6(bone morphogenetic protein 6: BMP-6)プロモーター領域のメチル化状態を解析した。 北海道および岩手県の家畜診療施設、北海道内の食肉衛生検査施設および茨城県の家畜保健衛生施設より、現在までに3歳齢未満の肥育EBL牛、肥育EBL牛、乳用EBL牛,肥育健常牛および乳用健常牛各68、11、20および10頭、また3歳齢以上の繁殖EBL牛、乳用EBL牛および乳用健常牛34、30および10頭の末梢血またはリンパ節が提供された。 3歳齢未満の肥育EBL牛32頭を用いたアポトーシス関連遺伝子であるBMP-6プロモーター領域に位置するCpG islandのメチル化解析を行った。対照として3歳齢未満の乳用EBL牛,肥育健常牛および乳用健常牛をそれぞれ10,15および10頭,3歳齢以上の乳用EBL牛および乳用健常牛をそれぞれ25および10頭解析し、比較した。BMP-6のCpG islandのメチル化割合の中央値は,3歳齢未満の肥育EBL群で8.9%であった。一方,3歳齢未満の乳用EBL群,肥育健常群および乳用健常群はそれぞれ3.2,2.1および0.4%,3歳齢以上の乳用EBL群および乳用健常群はそれぞれ2.5および2.1%となり,3歳齢未満の肥育EBL群はその他の群に比べ有意にメチル化割合が高かった。以上の結果よりBMP-6プロモーター領域の高率なメチル化が若齢肥育牛におけるEBL早期発症に関与する可能性が示唆された。この実験結果は現在論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で研究活動が大幅に制限された期間もあったが、BMP-6プロモーター領域のDNAメチル化状態を解析する実験系を確立した。現在までに、若齢肥育EBL牛では、その他の牛に比べBMP-6プロモーター領域のDNAメチル化が亢進しているという結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
発がんに関与する遺伝子としてがん抑制遺伝子(p53,Rb)、細胞接着遺伝子(cadherin)、DNA修復遺伝子(MLH1)、アポトーシス遺伝子(DAPK,BMP)および免疫関連遺伝子(interleukin,TNF)のDNAメチルか状態を解析する。加えて、DNAメチル化状態と栄養学的指標の関連を調査する。
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