1)昨年度の研究により、骨形成タンパク質6(BMP-6)遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化亢進が若齢牛における地方病性牛伝染性リンパ腫(EBL)発症に関与する可能性が示唆されたが、BMP-6プロモーター領域のDNAメチル化が亢進していない症例も多く存在した。そこで若齢EBL牛におけるDNAメチル化状態の特徴を明らかにするため、若齢EBL牛および健常牛各1頭を用い、ゲノムワイドなDNAメチル化状態を解析した。若齢EBL牛では健常牛に比べ、発がん抑制遺伝子、アポトーシス遺伝子および免疫関連遺伝子のメチル化亢進が認められた。これらの遺伝子領域のDNAメチル化亢進が若齢牛におけるEBL発症に関与している可能性が示唆された。 2)牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)は株ごとに伝播性や病原性が異なることが報告されているが、若齢EBL由来BLVの性状は不明である。そこで本研究では若齢EBL由来BLVの特徴を明らかにするため、若齢EBL72頭および高齢EBL50頭由来のBLV全ゲノム塩基配列を決定し系統樹解析を行った。系統樹解析により101株はA群36株(若齢EBL-30,高齢EBL-6)およびB群65株(若齢EBL-34,高齢EBL-31)に分類されたが、C群に分類された株は認められず、残り21株はどの群にも属さなかった。B群は若齢EBL由来BLVが多く含まれる群(B-1群)(若齢EBL-30,高齢EBL-7)と高齢EBL由来BLVが多く含まれる群(B-2群)(若齢EBL-4,高齢EBL-24)に分かれていた。AおよびB-1群の共通配列とB-2群の共通配列を比較したところ、アミノ酸としての相違はpro、polおよびtax領域で各1~3ヵ所、計5ヵ所に認められた。これらウイルス増殖に関わる酵素および転写活性化因子の相違が若齢牛におけるEBL発症に関与する可能性が示唆された。
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