研究課題
1)転写制御異常により発症するIEIの病態解析について当初の研究計画であった患者由来の検体でのChIP-qPCRやChIP-seq、RNA-seq等の実施はコロナ禍による受診控え等で延期となっている。CRISPR/dCas9システムの構築については、pEF1a-BirA-V5-neoおよびpEF1a-FB-dCas9-puroのプラスミドを購入した(Addgene社)。HEK293Tにトランスフェクションし、蛋白発現を確認した。前者は抗V5抗体により良好に検出されたが、後者は抗FB抗体によって蛋白が検出されなかったため、plasmidの全長をシークエンスし配列を確認した。蛋白発現に重要なpromoter領域と、FB-tag、dCas9の配列には問題がなく、plasmidの精製、トランスフェクションを再度実施中である。2)STAT3の機能獲得型変異を有する日本人患者の臨床的および免疫学的多様性に関する研究網羅的な遺伝子解析により、既知の遺伝子異常をより迅速に診断することが可能になったとともに、同じ遺伝子異常の中にも多様な病態や表現型が存在することがわかってきた。Signal transducer and activator of transcription 3(STAT3)は、シグナル伝達や転写を活性化することで細胞の分化や増殖を制御するタンパク質である。STAT3遺伝子の生殖細胞における機能喪失型変異は常染色体優性高IgE症候群をもたらすが、体細胞における機能獲得変異はいくつかの悪性腫瘍と関連しているとされている。近年、STAT3の生殖細胞型機能獲得変異が、1型糖尿病や炎症性腸疾患などの自己免疫疾患と関連することがわかってきた。われわれは、3つの新奇変異を含む、生殖細胞におけるSTAT3変異を有する日本人5家系を同定し、臨床的および免疫学的考察を加えて論文化し報告した。
2: おおむね順調に進展している
細胞株にCRSPR/Cas9を用いて変異を導入する実験が思ったように進んでおらず、材料や実験方法も含めて再検討が必要と考えられる。一方今後の研究課題として、luciferase assayの準備は着々と進んでいる。コロナ禍で患者の受診控え等もあり、患者検体の収集が予定通り進んでいないこともあり、当初の予定よりは遅れてはいるが、準備は整いつつある。
転写活性(Luciferase assay)患者由来の変異が果たして転写活性を低下させているかを間接的に確認するために、pGL4.10-luciferase2 vectorのmulti cloning siteに、BTK遺伝子のpromoter領域配列(Exon1の前半部分までを含む約1800bp)を挿入したもの(pGL4.10-BTKpro)と、同配列に加え、intron1の3’配列側1029bpおよびExon2の5’側配列の一部を含むもの(pGL4.10-BTKpro+1029)を挿入したものを作成し、B細胞系細胞株でBTK発現のあるReh、Daudi、Rajiと、T細胞系細胞株でBTK発現のないJurkatを用い、上記のベクターをトランスフェクションしLuciferase assayを行う。上記の実験系によって、intron1配列が転写活性を増強しうるか、また、患者でみられたintron1の変異が転写活性に影響を及ぼすかどうかを検証する。
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J Clin Immunol.
巻: 41(4) ページ: 780-790
10.1007/s10875-021-00975-y