今年度は(1)桜島昭和火口における火映変動現象の解析と(2)機動的映像観測システムの開発を中心に実施した。(1)火映変動現象について、前年度の成果としてブルカノ式噴火の爆発1-2秒前に発生する空振を伴う変動(短周期変動)と、噴火開始の数十秒前に始まる緩やかな変動(長周期変動)を見出した。今年度はこれらの現象の整理とメカニズムの考察を進めるために対象期間・イベント数を2011-2015年の90件に増やした。その結果、空振を伴う短周期変動が起こるイベントは全体の3割ほどであるのに対し、長周期変動はほぼ全てのイベントで見られる現象であることがわかった。短周期変動は画像解析から顕著な温度上昇を伴うことが示唆され、爆発直前の火口底での亀裂開口がメカニズムとして考えられる。一方、長周期変動の開始時刻は噴火3秒-5.5分前と幅があり、噴気増加による火映の発達が原因として考えられる。また、長周期変動の時間スケールは先行研究で報告されている噴火前の山体収縮と調和的であり、火道からのガス漏れに対応している可能性がある。以上の結果から、噴火前数秒から数分の時間スケールで起こるガス漏れ(火映の長周期変動)が噴火開始過程において重要であること、また一部のイベントでは火口底での亀裂開口(火映の短周期変動)が爆発のトリガーであり、火道システムの最上部から噴火が開始する可能性が示唆された。後者については本研究で得られた新たな知見である。(2)機動的映像観測システムについては前年度に作成したプロトタイプの電源供給部分を改良し、野外でテスト観測を実施した。霧島硫黄山火山の火口極近傍において鉛蓄電池とソーラーパネルを使用した長期試験を実施し、3週間程度の試験期間で問題なく動作することが実証された。今後、国内外の火山でブルカノ式噴火が発生した際に機動観測を実施し(1)で考察したモデルの検証を行う。
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