昨年度,課題に挙げていた透水係数が大幅に変化する地盤条件において,今年度は実験的な検討を進めた.具体的には,局所的に低透水部が存在する地盤モデルを対象とし,特に低透水部内の水溶性物質の保持特性に着目して定量評価した.着目した理由は,溶質が低透水部に入り保持され続けてしまうと,排除されるのに長時間かかり,浄化コストが大幅に増大してしまうためである.保持特性を評価するため,対象となる複数の地盤モデルを一次元カラム内に構築し,溶質輸送実験を繰り返した.このとき,濃度観測用のロガーを低透水部に設置することで,水溶性物質の保持状況を補足した.これにより,保持特性が低透水部の幾何形状に応じて大幅に変動することが分かった.また,一次元カラム内の流速条件にも保持特性が依存することが確認できた.流速の変化は,水溶性物質の分子拡散現象の支配性の変化につながり,結果として,異なる保持特性を示したと考えられる. また,フィールドでの単孔式トレーサ試験では,実験デザインの最適設計や季節による影響の確認,再現性の確保などを目的に,今年度も複数回に渡って実験を実施した.結果として,どの季節においても,類似した輸送パラメータ値を得ることができた.このことは本実験の再現性の高さを示している.また,トレーサの初期濃度が高い場合,分子拡散現象による観測孔外部へのトレーサ流出の影響を受けて,パラメータ推定値の信頼性が低下することが確認できた.これは,トレーサ試験を実施する上での試験デザインの最適化に向けて,重要な成果といえる.
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