研究課題/領域番号 |
20J10803
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
冨田 和孝 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | pMAIRS / GIXD / 分子配向 / 薄膜 / ポルフィリン / 分子間相互作用 |
研究実績の概要 |
薄膜中の有機半導体分子の集合構造を目的にしたがって狙い通りに制御する技術は,分子配向や結晶構造が性能を大きく左右する有機薄膜太陽電池(OPV)および有機薄膜トランジスタ(OTFT)などのデバイス性能の向上に必要不可欠な技術である.本研究では,微小角入射X線回折(GIXD)法とp偏光多角入射分解分光(pMAIRS)法の組み合わせによる薄膜中の結晶構造および分子配向解析に基づいて,有機半導体薄膜の分子集合構造を形成するメカニズムを明らかにし,構造制御手法の確立につなげることを目指している. 本研究では,ポルフィリン環の中心金属(M)と置換基のピリジル基との相互作用が凝集構造形成の鍵となる,有機半導体材料のTetrapyridylporphyrin(TPyP)に着目した.中心金属として,2価の陽イオンになりやすい第4周期の遷移金属であるFe,Co,Ni,Cuを選び,それらをもつTPyPを合成した.得られたTPyPについて,蒸着膜を作製し,その分子集合構造を解析した.その結果,中心金属を変えていくと,ピリジル基との配位能が変わり,薄膜中の分子凝集構造が大きく変化することがわかった.さらに,Edge-on,Random,Face-on配向と,分子配向も変化することが明らかとなった. この成果は,当研究室で新しく導入したX線回折装置を用いて,さらに詳細な薄膜構造解析を行った後,2021年度中に国際的な学術誌への発表を計画している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GIXD法とpMAIRS法を用いることで,ポルフィリン誘導体薄膜は,2次元シート状の凝集構造が分子配向を決定づけるというメカニズムを明らかにできた.そして,2次元シート構造を利用した構造制御手法の確立にも踏み出すことができている.
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今後の研究の推進方策 |
一般的な有機半導体デバイスには,基板として酸化インジウムスズ(ITO)や,シリコン(Si)などの表面不活性な材料が用いられる.したがって,基板界面との分子間相互作用を薄膜構造制御に利用するのは困難であった.今後の研究では,水面上に膜を形成した後,基板上に転写するLangmuir-Blodgett(LB)法を利用することで,水面との相互作用を活用した分子配向制御を検討している. 現段階では,ポルフィリン環に親水基を一つ導入した材料を合成し,LB膜を作製している.LB膜の構造解析の結果,同様の分子骨格を持つポルフィリン誘導体では実現困難であった,Edge-on配向を達成できていることが明らかとなった.今後,さらに親水基の個数や位置を変えたポルフィリン誘導体を合成し,一次分子構造と,配向角やパッキング構造との関係性を詳しく調べる.
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