研究課題/領域番号 |
20J10841
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
足立 晴彦 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | カブトムシ / ツノゼミ / 折り畳み |
研究実績の概要 |
前年度において、RNAiによる解析で、カブトムシの角原基の折り畳み形成に関与する複数の遺伝子を見出し、また、関与が予想される細胞動態もいくつか見つかってきた。一方で、角原基の折り畳みパターンを配置する位置情報(特に、2つの同心円パターンや細胞分裂パターンの配置)が何に由来するのかは全くわかっていなかった。そこで、角原基の外側(幼虫のクチクラ殻)と内側の構造を調べると、まず幼虫のクチクラ殻の内側に、他の領域とは全く異なる2点の突起構造を発見した。これらの構造が、実際に、位置情報源になっているかどうかを実験的に確かめることはできなかったが、位置情報源となりうる構造を見出せたのは、大きな進展である。 また、RNAiによる解析を続ける中で、クチクラと上皮との接着に関与しているとされるdumpy遺伝子の RNAiによって角原基のキノコ状のマクロな形態が変化することを見出した。また、蛹の角においても、クチクラと上皮の接着が剥がれた表現型が得られたため、カブトムシにおいても、dumpyによる接着機構が形態形成に関与する可能性が示唆された。 ツノゼミにおいては、前年度までにヨコトゲツノゼミを用いて、細胞シートの収縮過程で形を作るというプロセスを報告したが、本年度は、他の形をした近縁種のツノゼミにおいても同様のプロセスの存在を示唆することができた。また、その過程で、ミカヅキツノゼミの幼虫のクチクラが、多層かつハニカム構造になっているという興味深い現象を見出した。 ヨコトゲツノゼミについても、幼虫時には存在した突起構造が成虫時に消失するという点に着目し、解析を行った。その結果、脱皮直前の幼虫にはまだ突起は存在し、その表面には頂点から放射状に細かい折り畳みパターンが存在することを見出した。したがって、傘が開くように折り畳みを展開させることで突起を消失させるという、興味深いプロセスの存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
角原基の折り畳みパターンを配置する位置情報(特に、2つの同心円パターンや細胞分裂パターンの配置)が何に由来するのかは全くわかっていなかったが、位置情報源となりうる構造を見出せたのは、大きな進展である。
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今後の研究の推進方策 |
昆虫を含む節足動物の折り畳まれた原基形成を介した形態形成について、固定サンプルでの解析では詳細な機構の解明が難しいことが判明したため、上記の課題に対して、生体の解析が行える生物モデルの探索を上記と並行して行った。その結果、ヨーロッパイエコオロギの産卵管やミナミヌマエビの額角の脱皮直前のクチクラにおいて、カブトムシやツノゼミで見られるような方向性のある等間隔な折り畳みが確認された。特に、ミナミヌマエビは身体が透明で、小型の水生生物であるといった観点から、生きた状態での折り畳み発生プロセスの観察に有用であると考えている。
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