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2020 年度 実績報告書

光多重散乱を用いた豆腐の凝固特性の評価

研究課題

研究課題/領域番号 20J10925
研究機関京都大学

研究代表者

斎藤 嘉人  京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2022-03-31
キーワード豆腐 / 硬さ / 散乱 / 微細構造
研究実績の概要

本研究では、豆腐製造における豆乳の凝固過程の非破壊計測、および完成した豆腐製品の硬さの客観的かつ非破壊的な計測を見据え、光の拡散散乱光の計測システムを用いた非破壊・非接触による豆腐の硬さの評価技術の確立を目的とする。採用第一年目での研究進捗は下記のとおりである。
非破壊・非接触型の拡散散乱光の計測システムの完成では、当初の計画の通り、従来の垂直入射・接触式の散乱光測定の光学系を改良し、斜め入射反射測定を採用した非破壊・非接触による光学系の構築が完了している。光源として波長633 nmのHe-Neレーザを、検出器としてカラーカメラを用い、2枚のミラーを用いて入射角を任意に調整できる光学系の構成とした。標準物質イントラリピッドを用いた光学定数評価から計測の再現性が確認できており、今後豆腐の計測に移行する。
豆腐の観察面の方向が微細構造に与える影響の評価では、豆腐の微細構造を観察する深さおよび方向の基礎検証を行った結果、「表面深さ1cm」を「水平面から」計測することで再現性高く豆腐の微細構造を評価できることが明らかとなった。
さらに、当初の計画で2年次に予定していた微細構造の定量評価も完了している。微細構造(カード構造)の幾何学的パラメータに着目し、凝固剤濃度の異なる豆腐の微細構造を定量評価した。結果、凝固剤濃度が大きくなるにつれカード構造の穴の面積は小さくなり、その数は増加する傾向が見られた。ここで、凝固剤濃度が大きくなるほど硬さの指標であるヤング率も増加したことから、微細構造が緻密になるほどで豆腐の硬さが増加した可能性が示唆された。今回確立したカードの穴のサイズや数の定量法を用い、今後計測する散乱係数の結果を考察する予定である。
本結果は、これまで定性的評価しか行われてこなかった豆腐の微細構造を定量評価した初の事例であり、農業食料工学会誌83巻2号に英文にて掲載済みである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

採用1年目の計画は、非破壊・非接触型の拡散散乱光の計測システムの完成、および豆腐の観察面の方向が微細構造に与える影響の評価の2項目であり、前者は概ね計画通り、後者は計画以上に進行した。
非破壊・非接触型の拡散散乱光の計測システムの完成では、斜め入射反射測定を採用した非破壊・非接触による光学系の構築が完了している。光学系の構築に必要な光源や検出器、ミラー、アイリスなどの光学部品や、妥当性評価に必要な標準物質の購入は、新型コロナウイルスの影響で2か月ほど遅れた。しかしながら、部品の納品までに光学系の設計を完了させ、納品後迅速に構築に取り掛かることができたため、標準物質を用いた妥当性評価まで完了させることができた。
豆腐の観察面の方向が微細構造に与える影響の評価についても、新型コロナウイルスの影響で実験所が一時活動停止したため、顕微鏡観察を開始するまでに3か月の時間を要した。その間、過去取得したデータを整理し検証内容を吟味することで、迅速に実験を開始することができた。その結果、豆腐の微細構造を観察する深さおよび方向の基礎検証は半年のうちに完了させることができ、当初の計画で2年次に予定していた微細構造の定量評価も1年次のうちに完了した。本結果は筆頭著者の論文として投稿し、1年次のうちに受理されており、当初の計画以上の進捗であったと評価している。
以上の理由から、本研究は概ね計画通りに進展していると評価している。

今後の研究の推進方策

採用2年目では、非破壊・非接触型の計測システムを用いた豆乳および豆腐の光学定数の評価、および豆腐の微細構造の特徴量との関連性評価を行う。
まず、非破壊・非接触型の計測システムを用いた豆乳および豆腐の光学定数の評価では、1年次で構築した光学系を用い、凝固度の異なる豆腐の光学定数を評価する。ここでは凝固温度および凝固剤濃度の異なる豆腐を調製し、吸収係数と等価散乱係数を計測し、同時に計測する豆腐の硬さとの関連性を調べる。豆腐の散乱係数が大きく、本光学系の測定限界を超える可能性も考えられるため、その場合はマクロレンズやレーザ集光などにより光学系を改善する予定である。その際、光学系の再評価を行う必要があるため、モンテカルロシミュレーションを用いた光伝播シミュレーションの結果と実験結果を比較し、正しく測定できていることを確認する。
さらに、測定した豆腐の光学定数と微細構造の特徴量との関連性を評価し、非破壊的に評価できる豆腐の微細構造を調べる。1年次で既に確立した豆腐の微細構造の定量法を用いて、カードの間隙率や間隙サイズ、緻密性を定量評価し、光学定数との相関分析を実施する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Quantitative analysis of tofu microstructure with different coagulant concentrations based on geometric parameters and Haralick texture features2021

    • 著者名/発表者名
      Yoshito Saito, Wen-Hsin Chiang, Naoshi Kondo, Tetsuhito Suzuki
    • 雑誌名

      農業食料工学会誌

      巻: 83(2) ページ: 95-104

    • 査読あり
  • [学会発表] Application of Spectroscopy and Imaging Techniques to Reduce Food Loss in Post-harvest2020

    • 著者名/発表者名
      Yoshito Saito, Kazuya Yamamoto, Kazunori Ninomiya, Naoshi Kondo
    • 学会等名
      International Smart Food Chain Symposium 2020
    • 国際学会
  • [備考] 京都大学 生物センシング工学研究室

    • URL

      http://www.aptech.kais.kyoto-u.ac.jp/

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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