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2020 年度 実績報告書

双性イオン触媒を用いたエステル類の効率的不斉変換法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20J10950
研究機関九州大学

研究代表者

若藤 空大  九州大学, 理学府, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2022-03-31
キーワード有機分子触媒 / 相間移動触媒 / 双性イオン触媒 / 四級アンモニウム塩 / 不斉塩基加水分解 / 不斉加アルコール分解 / エステル類 / アズラクトン類
研究実績の概要

本研究では、既存のキラル相間移動触媒を用いたエステル類の不斉塩基加水分解反応の触媒活性と立体選択性向上、および新規触媒反応開発の二つを目的として課題に取り組んだ。課題解決の方策として、極めて高い立体選択性を示す酵素の反応機構を模した触媒である、分子内に求核攻撃可能な酸素原子を有する新しいキラル四級アンモニウム塩触媒の開発に取り組んだ。触媒合成についてはおおむね順調に遂行することができ、目的とする新規触媒を得ることに成功した。
次に、合成した触媒を用いてN-保護アミノ酸エステル類の不斉塩基加水分解反応を行ったところ最大96%収率の高い触媒活性を示したものの、期待していたような高い立体選択性は発現せず、最大81:19 エナンチオマー比 (er)であった。従来の触媒系では最大99%収率95:5 erの立体選択性で目的物を得ることができていたため、触媒活性については同等の性能を有しているものの立体選択性に関してはパフォーマンスが低下する結果となった。また、同触媒を用いてアミンを求核剤として用いる加アミン分解反応についても試みたが、目的物であるビスアミドの生成を確認することはできなかった。
以上のように新規双性イオン触媒を用いた反応開発が難航したため、従来の触媒を用いた新規反応の開発としてアミノ酸エステル、アズラクトン類の不斉加アルコール分解反応に引き続き取り組み、アルコール基質適用範囲の大幅な拡充を行うことができた。また、これまで競争反応である加水分解によって収率の低下が原因となっていた水溶性のアルコールの利用について、反応条件のさらなる検討によって適用を可能にすることに成功した。さらに、Hammettプロットや量子化学計算による反応機構解析によって本反応についての興味深い知見が得られており、研究を大幅に進捗させることができている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新規触媒による反応開発については、触媒合成については当初の計画通り問題なく進行したものの、合成した触媒を用いた既存反応の立体選択性改善や新規反応の開発には至ることができなかった。この点では当初の計画から方針の修正が必要であると考えられるため、進歩状況としてはやや課題を残す結果となった。一方で、触媒活性の観点から見た場合目標とするレベルに到達していると評価することができるため、触媒のベースとなる骨格の変更やさらなる置換基の変更、反応条件の検討によって目的とする立体選択性に到達できる見込みがあると考えられる。また、新規触媒の開発のみならず従来の触媒を用いた不斉加アルコール分解反応について大幅に研究を進歩させることができた。アルコール適用範囲の大幅な拡充、特に従来の有機溶媒/水系では適用が困難であった水溶性のアルコールを利用可能になったことで研究を大きく進捗させることができた。実験と計算化学による反応機構の解析についても実施し、本反応についての興味深い知見を得ることについても達成している。
以上の点を踏まえ、解決すべき課題も多く残されているものの研究全体として進歩が見られた点から「おおむね順調に進展している」と評価することができると考えられる。

今後の研究の推進方策

新規双性イオン触媒を用いた反応開発についてはベースとなるシンコナアルカロイド類の追加検討、新たな置換基の導入によって立体選択制の改善を目指す。また、不斉塩基加水分解だけでなく不斉加アルコール分解、プロトン化反応といった異なる反応への適用を検討し、新規触媒が持つ有用性について調査を行う。また、計算化学的なアプローチによる最適な触媒構造の探索などについても実施が可能であると考えられる。
既存の触媒を用いた不斉加アルコール分解反応については順調に研究が進歩しているため、論文による発表を行う予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 相間移動触媒を用いた不斉加アルコール分解による アズラクトン類の動的速度論的光学分割2020

    • 著者名/発表者名
      若藤空大、土肥弘嗣、チョヘミン、蒲池高志、山本英治、徳永信
    • 学会等名
      第117回有機合成シンポジウム

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公開日: 2021-12-27  

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