本研究の大きな意義は,我が国の消費電力の約55%を占めるモータの高効率化を推進することである。更にその中でも,約50%を占める産業用途に使用されるモータに着目しており,日本の省エネルギー化に貢献することを目的としている。また,より小型・低コストな付加価値の高いモータを実現することも本研究の狙いである。またモータシステムによっては,システム全体の小型化のため,扁平なモータが求められるため,本研究では扁平形状で高いトルクを実現できるアキシャルギャップモータ(AGM)に着目した。 2020年度までに,回転子のコアレス化やネオジムボンド磁石の適用によって従来AGMから効率を10%pt.以上改善することに成功している。また,固定子コアに使用する圧粉磁心(SMC)について,仮想材料を膨大に作成し,有限要素法でモータ特性に与える影響を明らかにした。 2021年度の成果としては,上記の仮想材料におけるモータ特性への影響を考察し,AGMの高効率化に適しているSMCの材料特性を定量的に示すことに成功した。また,AGMの高効率化の観点からの材料開発の方針を学術論文にて提案した。加えて,材料メーカーとの協力により,提案したSMCの開発方針に沿って実際に新しい材料を開発した。その材料を固定子コアに用いたAGMを実現し,実験により評価した結果,6000 rpmという高速回転において,96%を超える最高効率を示した。また,運転範囲によっては,従来のSMCを用いたAGMに比べて7%pt.以上の効率向上を実現した。SMCの仮想材料に基づいた材料特性を実現でき,AGMの効率を飛躍的に改善できることを実験で明らかにしたことは大きな成果であり,この成果はAGMの高性能化に大きく貢献する可能性がある。また,以上の成果は2本のジャーナル論文や学会にて成果を公表しており,関連学会から発表賞を受賞するなどしている。
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