研究課題/領域番号 |
20J10967
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
筒井 瑞貴 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | ディケンズ / イギリス小説 / ヴィクトリア朝 / 自己言及性 |
研究実績の概要 |
2020年度では、新型コロナウイルス感染拡大により予定していた在外研究を実施することができず、国内で収集可能な文献資料の分析を中心に研究を進めた。ディケンズの初期の長編小説Nicholas Nicklebyにおけるメロドラマ/反メロドラマ性を論じた"Nicholas Nickleby: Dickens' Anti-Melodramatic Strategy"は、ディケンズ没後150周年記念論文集の一章として出版する機会を得た。また、中期の自伝的小説David Copperfieldにおける「読者」の存在に焦点を当て、語り手による執筆行為の意味を問うた論文"The Absent Reader in David Copperfield"はディケンズ・フェロウシップロンドン本部の機関誌The Dickensianに採録が決定した。さらに、後期の歴史小説A Tale of Two Citiesにおける歴史叙述やそのメタ性を考察した和文論文「『蘇りとしての歴史小説――『二都物語』における過去の表象」もディケンズフェロウシップ日本支部年報に掲載された。これらの論考を含んだ博士論文を2020年12月に提出した。一連の分析を通じて、ディケンズの作品において、自らの表現形式への内省や意識的な戯画化が顕著に見られること、そうした自己言及的プロセスを経てディケンズが創作を発展させていったことを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
在外研究を実施することができなかったが、国内外の査読付き学術誌や、共著の論文集で論考を多く発表する機会を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
博士論文の5章のうち、ディケンズの晩年の作品Our Mutual Friendを論じた第5章の論考を投稿論文として発表するために推敲を重ねる。ディケンズが編集していた雑誌の記事など周辺の資料を渉猟することでディケンズの創作観やフィクションに対する価値観をさらに検証していく。
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