研究課題/領域番号 |
20J10986
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
目黒 史也 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | クロマチンリモデリング / DNA損傷 |
研究実績の概要 |
ReptinおよびMonadを部位特異的に欠損したコンディショナルノックアウトマウスを作製し、その表現型解析を行った。(Reptinf/f;K14Cre, Monadf/f;K14Cre)その結果、胎生14日齢までは、Reptinf/f;K14Creマウスの臼歯に形態異常は観察されなかったが、胎生15日齢から臼歯歯胚の形態、特に内エナメル上皮の形態に異常が認められるようになった。その後歯胚は、次第に退縮を示す様になり、出生直前である胎生18日齢には歯胚上皮の痕跡的な組織像が認められるのみであった。次に、K14Creマウスとレポーターマウス(R26RLacZ)を交配させたマウスでCreリコンビナーゼの発現を確認したところ、胎生13日齢にその発現が始まることが観察された。 Reptinf/f;K14Creマウス胎仔の口蓋皺壁では、胎生14日齢で口蓋皺壁形成部位のマーカー分子であるShhの発現が認められたものの、胎生16日齢ではマウス胎仔の口蓋表面は平坦な形態を呈しており、波状の形態も確認できなかったことから、口蓋皺壁も歯胚と同様に、形成が途中で停止し、その後上皮が退縮した可能性がある。 以上の結果から、Reptinは歯および口蓋皺壁の形成において必須の役割を担っていることが示唆された。 Reptinf/f;K14Creマウス歯胚および口蓋皺壁における形態変化がいかなるメカニズムで生じているのかを検証するため、細胞増殖とアポトーシスについて確認した所、歯胚、口蓋共に細胞増殖が停止していることが示された。一方で表現型に対するアポトーシスの関与は限定的であることが示唆された。更にγH2AXとp53の解析からReptinf/f;K14Creマウスにおける表現型は、DNA損傷応答に関連したものである可能性が示唆された。 Monadのコンディショナルノックアウトマウスについては、現在作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
クロマチンリモデリングに関わる分子の同定や、リモデリング機構に関するinhibitor、activatorの検索を予定していたが、新型コロナ感染症の拡大に伴う研究時間の制限により、当初予定していたほどの研究の進捗は得られなかった。一方で、Reptinf/f;K14Creマウスの検索を通して、Reptinが歯と口蓋皺壁の発生に必須であること、表現型が生じる時期の特定とCreリコンビネーションの発現時期の特定を進めることが出来た。更に先行文献を参照し、クロマチンリモデリングが必須であるDNA修復機構に着目し、各種免疫組織化学染色を複数実施して、Reptinf/f;K14CreマウスにおいてDNAが損傷していること、そのDNA損傷に対し活性化された分子を同定した。この結果はクロマチンリモデリングが必須なDNA修復機構は歯や口蓋皺壁の発生へ関与している、という翌年度以降の研究課題を明確にする重要な知見といえる。加えて、胎生期の歯胚や口蓋皺壁におけるDNA損傷の存在そのものも、胎生期歯胚と口蓋形成に関する新規の知見と言える。 今後の研究成果を足がかりに、更に解析を進めることで歯胚や口蓋形成に関わる新たな知見の解明につながると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに得られた知見をもとに、翌年度はDNA損傷応答に関連するクロマチンリモデリング機構について解析を進めていく。当初Reptinとクロマチンリモデリング機構に共通して関連しうる分子は膨大な候補があり、解析が困難であると思われたが、昨年度の研究成果からより焦点を絞った解析が可能になった。当初の研究計画上にはDNA損傷応答に関わる分子機構の解明は含まれていなかったが、併せて解析を行っていく必要がある。具体的には、DNA損傷に関連するクロマチンリモデリング機構の解明、及びReptinコンディショナルノックアウトマウスにおけるDNA損傷応答の分子機構変動について、これまで関連が明らかとなっているp53等の遺伝子改変マウスを用いて、その表現型の変化を検証することで、より詳細な解析を進めていく。加えてもう一つの関連分子であるMonadの遺伝子改変マウスの作製が遅れているが、昨年度中に作製が完了する目処が立っており、本年度中にはその表現型の解析が可能であると思われる。 生体であるマウスの解析を行う上での今後予測される問題点として、以下の2点が挙げられる。 ①マウス交配が計画通りにいかない可能性 ②胎生期の早期に致死に至り解析が困難となる可能性 上記①に関しては、本報告書作成時点で必要と思われる系統マウスは全て交配可能な状態となっており、今後不測の事態に備え十分な個体数を用意する。②に関して、我々はタモキシフェン誘導性のCreリコンビナーゼを発現するマウスを飼育しており、このマウスを使用することでCreリコンビナーゼによる標的遺伝子のノックアウト時期を遅らせることで対応可能と思われる。
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