本年度は新たにMonadf/f;K14Creマウスの作成に成功し、その表現型を観察した。表現型の解析を行ったところ、Monadf/f;K14Creマウスでは歯、口蓋皺壁の形態は正常であった。これらの結果から、歯、口蓋皺壁の形成時期においてMonadは不必要、或いは機能に冗長性を有することが示唆された。 Reptinf/f;K14Creマウスの表現型についての解析を継続した結果、胎生16.5日齢になると、多くのReptinf/f;K14Creマウスで、歯胚の下部の部分が縮小していた。一方、口蓋粘膜では、野生型マウスでは胎生E14.5日齢で、重層の口蓋粘膜が認められたのに対し、Reptinf/f;K14Creマウスの口蓋粘膜では2層の上皮層のみであった。 昨年度の検索から、DNA損傷マーカーであるγH2AX陽性細胞の増加に伴って、p53の活性が亢進していたことが考えられる。組織学的解析の結果、p53遺伝子の下流で細胞周期調節に関わるp21も上皮細胞特異的に亢進していることが分かった。そこでp53欠損マウス(p53-/-)との交配によってダブルノックアウトマウス(Reptinf/f;K14Cre;p53-/-)を作成したところ、このマウスでは、Reptinf/f;K14Creマウスで歯胚上皮の臼歯退縮が始まる胎生16.5日齢を超えても歯胚下部の退縮が生じなかった。一方で、歯胚の上部と歯堤の欠損は認められた。 以上の結果からReptinf/f;K14Creマウスの歯胚下部では、Reptinが欠損することでDNAが損傷し、p53-p21経路の過剰な活性化が生じ、異常な収縮が引き起こることが示唆された。一方で、Reptinf/f;K14Cre;p53-/-マウスの歯胚で、歯胚上部と歯堤の欠損が改善しないことは、Reptinの歯胚における機能が、歯胚上部/歯堤と歯胚下部で異なることを示している。現在は胎生期のDNA損傷因子の検索と、p53-p21経路以外の分子変動について検索を継続している。
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