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2020 年度 実績報告書

ハーフメタルフルホイスラーの規則度制御による性能向上と次世代デバイスのチャレンジ

研究課題

研究課題/領域番号 20J11073
研究機関東北大学

研究代表者

Li Hezhang  東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2022-03-31
キーワードフルホイスラー / 規則度 / 熱電性能 / 電子構造解析
研究実績の概要

熱電材料の発電力は出力因子 PF (= S2σ) で表される.ここで,S, σ,はゼーベック係数,電気伝導率である.本研究の目的は,フルホイスラー合金の規則度と PF の関係を明らかにし,電子構造と熱電性能の計算に基づいて高い PF をもつ p 型フルホイスラー合金を創製することである.今年度は,PF が高いフルホイスラー合金を作製することを目的とし,規則度とPFの関係解明と,規則度の最適化による PF の向上を試みた.
異なる規則度を持っているフルホイスラー合金Mn2VAlの電子構造を計算した.電子構造計算の結果から,フルホイスラー合金の規則度が変化すると電子構造が変化していることがわかった.熱電性能に関して,SはB2規則度の増加にともない増加した.その結果,フルホイスラー合金のB2 規則度の増加による電子構造の変化がSの増加及びPFの増加に大きく寄与していることがわかった.
実験方法の調整で規則度を最適化することで,PFの向上を試みた.それらの試料の構造解析を測定した結果から,反応時間を調整することで,B2規則度が制御できることがわかった.それらのB2規則度と熱電性能を測定した結果から,B2規則度が66%のMn2VAl試料において,PFが最も高くなることがわかった.このPFの値は,これまでに報告されたP型Mn2VAl系熱電材料の中で最も高い値であった.結果として,計算結果と実験結果を組み合わせるとこれまでに報告されていないフルホイスラー合金の規則度が制御できる作製方法の確立,フルホイスラー合金の規則度と熱電性能の関係解明を行った.これらの研究成果は,英語論文,国内外の学会で報告した.
以上の通り,B2規則度の増加によってPFを大幅に増大できることを示した.今後,規則度の制御を踏まえてSをさらに増加する部分置換元素 (SiやGe) で部分置換することで,PFがさらに増加する可能性がある.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的はフルホイスラー合金の規則度と熱電性能の関係を解明することである. 今年度は異なる規則度を持っているフルホイスラー合金Mn2VAlの電子構造の計算を行なった. 電子構造計算の結果から, フルホイスラー合金Mn2VAlの規則度が変化すると電子構造が変化していることがわかった. 熱電性能に関して, ゼーベック係数 は B2 規則度の増加にともない増加した. その結果, フルホイスラー合金の B2 規則度の増加による電子構造の変化がSの増加及び PF の増加に大きく寄与していることがわかった.
実験方法の調整で規則度を最適化することで, PF の向上を試みた. ボールミル, 放電プラズマ焼結の反応時間を調整し, 試料を作製した. それらの試料の構造解析を測定した結果から, 反応時間を調整において, B2 規則度が制御できることがわかった.
結果として, 計算結果と実験結果を組み合わせるとこれまでに報告されていないフルホイスラー合金の規則度が制御できる作製方法の確立, フルホイスラー合金の規則度と熱電性能の関係解明を行った.
以上の通り, B2 規則度の増加における電子構造の変化と, S の増大を実証し, PF を大幅に増大できることを示した. この結果は研究計画と対応し, 現在までの研究はおおむね順調に進展している.

今後の研究の推進方策

これまで, 本研究は電子構造計算と実験を組み合わせて B2 規則度の増加における電子構造の変化と, S の増大を実証し, PF を大幅に増大できることを示した. 今後, 規則度の制御を踏まえて S をさらに増加する部分置換元素 (SiやGe) で部分置換することで, PF が 3×10-3 Wm-1K-2を超える可能性がある.
また, 電子構造計算で高い熱電性能を持つ p 型フルホイスラー合金を予測, さらに合成を行う. 予測したフルホイスラー合金をこれまでの研究結果を踏まえて, キャリア密度と規則度を調整して合成を行う. 合成した試料の結晶構造解析, 熱電性能測定を行う. 以上の流れで規則度を制御して高い出力因子 PF の p 型フルホイスラー合金を開発する.
次は開発した p 型熱電材料と, n 型熱電材料の Co2MnSi を用いて熱電デバイスを作製する. p 型と n 型フルホイスラー合金で電気抵抗と熱抵抗を同程度にする断面積を決定において熱電素子のサイズの最適化を行う. さらに熱電発電モジュールの電極材料の選択を行う(候補材料:Cu, Al, Ni, Ti). SPS や溶接を用いて, 熱電素子と電極の接合界面における接触抵抗の低減を行う. 最後に, 熱電デバイスの上下面に温度差をつけて開放電圧と短絡電流を測定によって, 熱電デバイスの性能評価を行う.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Effects of Disorder on the Electronic Structure and Thermoelectric Properties of an Inverse Full-Heusler Mn2CoAl Alloy2021

    • 著者名/発表者名
      Li Hezhang、Hayashi Kei、Nagashima Yoshimi、Yoshioka Shun、Dong Jinfeng、Li Jing-Feng、Miyazaki Yuzuru
    • 雑誌名

      Chemistry of Materials

      巻: 33 ページ: 2543~2547

    • DOI

      10.1021/acs.chemmater.0c04902

  • [雑誌論文] Magnetic Full-Heusler Compounds for Thermoelectric Applications2021

    • 著者名/発表者名
      Hayashi Kei、Li Hezhang、Eguchi Mao、Nagashima Yoshimi、Miyazaki Yuzuru
    • 雑誌名

      Magnetic Materials and Magnetic Levitation

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.5772/intechopen.92867

  • [雑誌論文] Distinct impact of order degree on thermoelectric power factor of p-type full-Heusler Mn2VAl compounds2020

    • 著者名/発表者名
      Li Hezhang、Hayashi Kei、Dong Jinfeng、Li Jing-Feng、Miyazaki Yuzuru
    • 雑誌名

      Materials Research Express

      巻: 7 ページ: 055503~055503

    • DOI

      10.1088/2053-1591/ab875b

  • [学会発表] Effect of disorder on electronic structure and thermoelectrical properties of inverse full-Heusler Mn2CoAl alloys2020

    • 著者名/発表者名
      H. Li, K. Hayashi, Y. Nagashima, S. Yoshioka, J. Dong, J. ーF. Li and Y. Miyazaki
    • 学会等名
      The 5th Asian Conference on Thermoelectrics (ACT5) &The 6th Southeast Asia Conference on Thermoelectrics (SACT6) (2020)
    • 国際学会
  • [学会発表] Preparation and Thermoelectric Properties of Mn2CoAl Inverse Full-Heusler Alloy2020

    • 著者名/発表者名
      H. Li, K. Hayashi, Y. Nagashima, and Y. Miyazaki
    • 学会等名
      The 2020 Magnetism and Magnetic Materials Virtual Conference (MMM2020), (2-6 November 2020, online)
    • 国際学会

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公開日: 2021-12-27  

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