研究課題/領域番号 |
20J11084
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
米沢 平成 北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 自動車駆動系 / アクティブ振動制御 / 制御周期制約 / バックラッシ |
研究実績の概要 |
まず,アクチュエータ制約プログラムを検討し,多様な条件で確認した.特に,制御周期をより長くすることで,制御系への悪影響をより強調した実験が可能であった.次に先行研究を参考にして,サンプル値制御器をチューニングし,性能の傾向を精査した.そしてて,やや定性的ではあるが,制御性能に対する重み関数のパラメータの調節指針が確認された.これは,サーボ型サンプル値制御器を産業界で実用化する上で,有用な知見であると考えられる.時変周期に起因するむだ時間対策としては,モデル予測のアルゴリズムを改良し,そのロバスト性を確認した.提案手法は,サンプル値制御器を用いた予測処理であり,制御入力の指令値に対する最大位相遅れを補償することに焦点を当てている.補償動作を実現するプログラムは精査・改良されつつ,実際の自動車駆動系を簡略化した基礎実験装置に実装された.いくつかの検証条件において提案手法の実験・シミュレーションを繰り返した結果,安定性および制御性能に関して,ある程度のロバスト性が確認された.従来の自動車駆動系の振動制御は制御周期制約に対して不十分であった.よって,本研究の成果は,サンプル値制御の応用が上記課題に有用であることを実証した点,および制御周期制約をより高度な次元で対策することで良好な車体振動特性を実現した点において極めて重要である.また,予測処理に必要な状態量の推定手法について,より詳細な考察を行い,その有効性を確認した. さらに本年度では,人工知能に基づく補償の検討も開始した.本検討においても進捗が得られたが,今後さらなる発展が見込まれるため,より詳細な検討を行う予定である. 上記と関連し,基礎となる成果は,査読付き国際誌における学術論文,および国内外の学会で発表されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画において,アクチュエータ制約プログラムのいくつかの条件における確認,サンプル値制御器のチューニング,およびその性能傾向の精査は遂行できた.時変周期に起因するむだ時間対策としては,モデル予測のアルゴリズムを改良し,自動車駆動系を簡略化した基礎実験装置に実装した.提案手法に対して実験・シミュレーション検証を繰り返した結果,安定性および制御性能に関して,ある程度のロバスト性が確認された.バックラッシに対する制御モード切換え補償の精査と確認,および状態量推定器により焦点を当てた考察等も行った.以上より,提案するアクティブ振動制御手法の核が確立された点において,研究計画は概ね順調に進展している. 上記に加えて,人工知能に基づく補償の検討も開始し,進捗が得られた.ただし,制御入力の学習を伴うアプローチも試みる予定であったが,スケジュール変更等により,検討が不十分である.また,実車モデルを対象とした数値シミュレーションの検討についても,今後より進捗が求められる.成果発表状況としては,上記と関連し,基礎となる成果が学術論文,および国内外の学会で発表された.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き実験装置とそのモデルを主要な制御対象として取り扱い,これに制御系を実装し,様々な条件下で検証を行う.制御性能をより精査し,振動抑制やロバスト性をさらに向上できるよう,制御系の改造やチューニングを試みる予定である.このために,基本的に前年度の検討項目は,必要に応じて確認と再検討が繰り返される.提案する制御系は,バックラッシや制御周期制約等の複合的な要素を補償し,残存課題や制御性能の向上が見込まれるため,比較検証等を通じて,より多角的な考察を行う予定である.特に,人工知能に基づく補償の構築はさらなる発展が見込まれるため,これに注力する.現在取り組んでいる知的推論法を用いた制御手法をより詳細に検討する必要性に加え,学習によるアプローチも検討の課題に含まれる.対象とする例としては,ファジィ推論,機械学習などが挙げられるが,その他の有力なツールも適宜取り入れる.また,実車に制御系を適用して,その制御性能および実用性を検証する予定である.具体的には,数値シミュレーションを通じて,提案手法を拡張および修正する.数値解析には,実車のパワートレインモデルが必要であり,特に簡略化された構造が望ましい.実車に対する検討において,他のアクチュエータ特性が,制御周期制約またはバックラッシに複合的な影響を及ぼす場合,提案手法のロバスト性向上の鍵となる可能性があるため,この調査も行う.ただし,人工知能を用いた手法に関する成果の学術論文投稿も重要な項目であり,投稿準備・査読状況等が難航した場合,こちらを優先的に行う場合がある.学会発表等の参加については,新型コロナウイルスの感染状況に応じて,適宜柔軟に対応する.
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