研究課題/領域番号 |
20J11122
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
後藤 悠太 早稲田大学, 大学院スポーツ科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | ランニング / 子ども / ランニング指導 / 走運動 / ランニングフォーム |
研究実績の概要 |
走ることは生きる上で必須の運動技能で、習わずとも2 歳~3 歳には自然と走れるようになる。しかし、そこで獲得した走り方が理にかなっているという保証はない。実際に、疾走能力にはランニングフォーム(技術)が大きく関係している。足の速い子は運動有能感を持ち、足が遅いことはスポーツ嫌いを生む要因ともなる事から、「正しいランニングフォーム」を獲得する事が重要である。本研究の目的は「正しいランニングフォーム」に重要な要素を明らかにし、それを身につけるための指導プログラムを確立する事である。本年度の実績概要は以下の通りである。 正しいランニングフォームの検証のために、幼児・児童の走運動特性(走速度に対応したステップ長(歩幅)とケイデンス(単位時間当たりの歩数)の調整)を測定した。この走運動特性はより速く走る事を追求した陸上競技短距離選手で特徴的な変化を示す事が報告されている。この特性の獲得過程を明らかにする事で、効果的なランニング指導の方法や介入時期を検討する上で役立つと考えられる。本年度の研究では、1歳児から小学校高学年まで走運動特性の測定を行ってきた。その結果、特に小学校高学年になる頃には成人のような走運動特性に変化する可能性が示唆された。このような走運動特性が形成される時期や要因をさらに特定するために、今後も測定を継続して行う予定である。 また、陸上競技選手の走運動特性の決定要因について明らかにするために、様々な走速度帯における複数筋の筋活動パターンを測定した。これらの測定は現在も進行中だが、走速度が変化する事で、ある特定の筋群がより活動する傾向が得られている。今後もこの測定を継続していき、走ることに特化した陸上競技選手の走運動特性からより効果的なランニング指導の方法について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、幼児・児童の走運動特性の形成について、発達段階に応じて特徴的な傾向を示すことを明らかにした。特に、小学校高学年にはこれまで報告されている成人のような走運動特性に近付いていく事が明らかになった。また、陸上競技選手の走運動特性に関連した筋活動パターンについても特徴的な傾向を示す可能性が示唆された。 本年度前半はコロナ禍の影響によって大規模な測定が困難であったため、当初目標としていた被験者数に達する事ができなかった。特に、学校施設に依頼する予定だった幼児・児童の走運動特性の測定は当初の予定よりも遅れてしまった。しかし、そのような状況下でも各実験の解析を進める中で特徴的な傾向を得る事ができたため、進捗としてはおおむね順調に進展していると考えられる。次年度は本年度の測定を継続し、より効果的なランニング指導の方法について検討する。
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今後の研究の推進方策 |
幼児・児童の走運動特性の形成過程についてより詳細に明らかにするために、各年齢のデータ数を増やす予定である。これまでの測定から特定の発達段階になるにつれて成人のような走運動特性を示す可能性が示唆されており、この形成過程を明らかにすることは今後の効果的なランニング指導の時期を検討する上で非常に重要である。 また、陸上競技選手の走運動特性の変化と筋活動パターンの変化の関係を明らかにすることで、今後のランニング指導の方法について検討する。実際に成人の陸上競技選手が実施しているトレーニングを発育・発達段階にある子どもに適用する事は難しい。そのため、次年度では子どもにとってより有用な指導プログラムを検討する必要がある。 2021年度についてもコロナ禍の影響を受けると考えられるが、予定通り進める努力をする一方で、実験ができない場合を想定して、これまで取得したデータをより詳細に解析することも合わせて行う。
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