2021年度は、アルゼンチン民商法典の成年後見制度について、その身上監護に関わる問題として、医療同意権に関する研究を開始した。同研究の足掛かりとして、「アルゼンチン法におけるインフォームド・コンセントの生成とその民事法的意義:本人意思尊重のための法制度構築に向けた基礎的考察として」(法学政治学論究131号)を公表した。 2022年度は、8月に3週間、ブエノスアイレス大学法学部客員研究員として、アルゼンチンに渡航した。本研究に関する資料収集を行うとともに、以下の調査協力者へのインタビュー調査を実施した:ブエノスアイレス大学教授、ラ・プラタ国立大学教授、ブエノスアイレス自治市公共弁護官、ラ・プラタ市弁護士、ラ・プラタ市公共弁護官、ラ・プラタ市弁護士。そのほか、ブエノスアイレス自治市公共弁護官らによるBorda精神病院への訪問に同行し、入院中の患者との面会の実態に関する調査の実施した。これにより、ブエノスアイレス自治市およびラ・プラタ市における、手続法および運用体制に関する分析をすることができた。 その成果として、2022年9月8日の成年後見法研究会において「アルゼンチン共和国およびブラジル連邦共和国における成年後見法改正」、2022年9月24日の家族と法研究会において「アルゼンチン民商法典における成年後見制度の改正と障害者権利条約への適合性」、2022年11月6日の日本家族〈社会と法〉学会において「アルゼンチン民商法典における成年後見制度の改正と障害者権利条約への適合性」、2022年12月9日の成年後見制度の在り方に関する研究会において「アルゼンチン法・ブラジル法(海外の成年後見制度に関する調査報告)」と題する研究報告を、それぞれ実施した。
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