研究実績の概要 |
強力集束超音波(HIFU)治療は体外から超音波を照射し体内のがん組織のみを加熱凝固させる低侵襲な治療法である. 超音波の照射によって生成するキャビテーション気泡は加熱効果を増強するが, 予期せぬ位置に生成した気泡の振動や圧壊によって正常な組織が傷つく恐れがある. そのため, 血管を対象にした気泡援用HIFU治療では組織の加熱凝固, キャビテーション気泡の生成位置, 血流をそれぞれモニタリングすることが重要である. 本研究では, 血管を対象にしたHIFU治療における新規血流イメージング手法の開発を目的とした.気泡援用HIFU治療では, HIFU照射によって生成するキャビテーション気泡の生成周期を利用することで, イメージング精度が向上することが報告されている. 一方, 医用超音波を用いた生体イメージングでは, 拍動によるモーションノイズを低減するために, 短時間かつ高フレームレートの短いアンサンブルサイズでのデータ取得が行われている. そのため, 拍動の周期性を利用した信号分離手法は未検討である. 本研究の新規性となる部分は, 長時間のデータ取得により, 拍動の周期性を利用して信号分離を行う点である.そこで, 頸動脈長軸をイメージング対象とし, 2心拍分の拍動に伴う時間変化を含む, 長いアンサンブルサイズでのデータ取得を行った. 取得したデータに対して, 時空間的特徴から信号を分離する特異値分解フィルタを適用し, 組織と血流の信号分離を行う新規イメージング手法の開発を行った.
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に実施した研究により, 拍動による影響の大きい頸動脈長軸において, 拍動の周期性を利用した特異値分解フィルタ性能を調査した. 今後の検討として,甲状腺内の微小血流および頸動脈の短軸をイメージング対象にした, 実験を行い拍動による時間変化を含む信号を取得する.
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