研究課題/領域番号 |
20J11172
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 博成 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 認知症 / 地域包括ケア / コンビニエンスストア / 高齢者支援 / クラスターランダム化試験 / Eラーニングプログラム |
研究実績の概要 |
本研究では、モバイル・マイクロラーニングの手法による認知症教育プログラムを開発し、コンビニエンスストア従業員を対象として、その効果を検証する。さらに、Relational Job Design理論に基づき、受益者(つまり、認知症のある顧客・住民)との関係性を強調することで、職務満足・定着意図・持続性などの労働アウトカムの改善を目指し、普及戦略のエビデンスベースを形成する。 令和2年度は①先進的にコンビニとの連携を進めてきた自治体の地域包括支援センター職員へのインタビュー調査を行い、連携上の課題を明らかにした。②日本フランチャイズチェーン協会が行ったアンケート調査データの二次分析により、コンビニエンスストアの認知症サポーター養成講座への参加によって、その後の地域包括支援センターとの協力の可能性が増えることを明らかにした。③一般市民を対象としたWeb調査を実施し、認知症に関する高い知識が、認知症が疑われる人への高い援助行動意図に関連すること、その関連が認知症への態度と認知症症状の解釈能力に媒介されていることを明らかにした。④システマティックレビューを通して、一般市民(非医療・福祉職)を対象とした認知症教育に関する現在利用可能なエビデンスを整理した。⑤認知症のある当事者を対象として、日常生活と買い物に関するインタビュー調査を行った。⑥プログラムの評価項目を決定し、予備調査を通して測定尺度を修正した。⑦以上の成果に基づき、「認知症eラーニング・コンビニ編《ReDesign》」を開発し、パイロットテストを経て内容の修正を行った。また、介入・調査システムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は上記の通り各調査分析を遂行し、2本の主著論文と2本の共著論文をGeriatrics & Gerontology International誌などの国際誌に掲載した。さらに、2本の論文を国際誌に投稿中である。 一方で、COVID-19の影響により、①地域包括支援センター職員や認知症のある当事者へのインタビュー調査を縮小または電話調査に変更し、②開発する教育プログラムを対面集会式から非対面オンデマンド式に変更することになった。変更後のプログラムではグループワークなど一部の教育内容は削除することになったが、参加者の時間的拘束が減り普及の面では優位であると考えられる。 以上の変更はあったものの、当初計画通り、本年度中に教育プログラムを完成させることができたため、「(2)おおむね順調」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後はクラスターランダム化比較試験により、開発した教育プログラムの効果検証を行う。5人の参加者がいる32の店舗、計160名が最低必要対象者数と推定されている。リクルートはダイレクトメールにより行い、参加者はWEBで登録を行い、割付が実施される。登録時、1か月後、受講3か月後の計3回の調査が行われる。介入群では登録後すぐにプログラムを受講し、待機群では1か月後調査の後に受講する。主要評価項目として認知症に対する態度、副次評価項目として認知症の知識、援助行動意図、(職務の)知覚された社会的重要性、職務満足、定着意図、持続性が測定され、線形混合効果モデルによって分析される。 得られた結果は国内外の論文・学会は発表等で公表するほか、開発したプログラムは一般利用できるようにシステムを整備し、普及を目指す。
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