| 研究課題/領域番号 |
20J11197
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| 研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
川原 遼太 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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| 研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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| キーワード | 血管擬態 / ErbB4 / MetAP2 |
| 研究実績の概要 |
研究課題の遂行にあたり、まずは血管擬態に関与する遺伝子の探索に注力し、その過程で樹立したがん細胞株を用いることで血管擬態マーカーを探索した。その中で今年度は2種類のタンパク質(ErbB4とMetAP2)に注目した。ErbB4は細胞表面の受容体分子であり、細胞の増殖や分化を調節する働きを持つ。MetAP2はタンパク質翻訳終了時にN末端のメチオニン残基を分離する活性を持つ酵素である。これら2つのタンパク質が血管擬態に関与するか否かを調べた。 はじめにErbB4を高発現している乳がん由来のT47D細胞において、ゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9システムによりErbB4をノックアウトした結果、血管擬態形成能が著しく向上した。一方、乳がん由来でErbB4の発現量が低いMDA-MB-231細胞において、ErbB4を過剰発現させると血管擬態形成が抑制されたことから、乳がん細胞においてErbB4は血管擬態抑制因子であることが強く示唆された。 MetAP2に関して、ヒト線維肉腫由来HT1080細胞においてMetAP2をノックアウトした細胞を樹立した。その細胞を用いて血管擬態形成能を評価した結果、MetAP2のノックアウトにより血管擬態形成能が著しく低下した。また、ノックアウト細胞に対してMetAP2を再発現させると形成能が回復したことから、内在性MetAP2は血管擬態形成を促進させていることが示された。 これらの成果により、ErbB4とMetAP2が新たな血管擬態調節因子であることを発見することができた。また、この過程で樹立した各遺伝子のノックアウト細胞は異なる遺伝的背景を持っており、血管擬態形成の機構も大きく異なると考えられる。そのため、これらの細胞において血管擬態形成時に発現量が上昇するタンパク質を探すことで、血管擬態マーカーの同定を行うことができると考えている。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
血管擬態形成を調節する遺伝子を複数同定することができたため、順調に研究が進展していると考えている。今年度の研究で血管擬態との関連を示したErbB4とMetAP2は、主にがん細胞や内皮細胞の増殖に関わる因子として知られてきた。これまでの血管擬態の研究では、主にがん細胞の遊走や浸潤に関わる遺伝子が注目されてきたため、「細胞増殖因子と血管擬態」という点で新たな機構を見出すことができた。 血管擬態形成は多種多様ながん細胞で起こり、各細胞の遺伝子発現パターンによって関与する機構が異なる。そのため、どの細胞の血管擬態形成にも必須な因子を同定するためには、異なる性質を持ったがん細胞を複数用いてマーカー分子を探していく必要がある。一方で、私が樹立したインテグリンβ1ノックアウト細胞は、細胞外マトリックスと細胞間の相互作用が抑制された細胞である。また、今年度樹立したErbB4ノックアウト細胞は細胞増殖因子NRG1の受容体が欠損した細胞であり、MetAP2ノックアウト細胞では新生タンパク質のN末端メチオニン切断が抑制されている。このように、多様な特性を持ったがん細胞を現在までに樹立することができ、かつ血管擬態形成にも差が生じるという結果が得られている。本研究課題の遂行にあたり、実験材料となるがん細胞の樹立には時間を要すると予想していたため、現在までにその樹立に成功しているのは順調であると考えている。
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| 今後の研究の推進方策 |
まずErbB4とMetAP2それぞれの遺伝子について、活性に重要なアミノ酸を置換した変異体が血管擬態形成に与える影響を調べる。その解析により、それらのタンパク質自体が重要なのか、それともそのタンパク質の活性が重要なのかを明らかにする。特に、ErbB4は細胞内の数多くのシグナル伝達に関わっており、その中にはMAPキナーゼ経路やPI3K/Akt経路など血管擬態形成との関与が示唆されているものも含まれている。そのため、ErbB4の変異体解析には時間をかけ、血管擬態形成を調節するシグナルを明らかにしたいと考えている。 また、profilinと血管擬態の関係についても調べる。Profilinはアクチンタンパク質の重合を促すことで、細胞骨格の形成に寄与するタンパク質である。そのため、profilinが血管擬態に与える影響を解析することで、血管擬態と細胞骨格の関係に関する新たな知見が得られると考えており、profilinノックアウト細胞の樹立を試みる。 上記の研究において樹立したがん細胞を用いて、western blottingなどの手法により血管擬態形成のマーカーとなり得るタンパク質の発現量を評価する。具体的にはMMP2やMMP9、VE-cadherinなど、形成時に発現量が上昇することが報告されているタンパク質を中心に解析を進めていく。そしてマーカー候補タンパク質の絞り込みに成功した場合、阻害剤もしくはRNA干渉によってそのタンパク質を阻害し、血管擬態形成が阻害されることを確認する。その結果から、どの候補タンパク質が血管擬態形成のマーカータンパク質といえるか否かを明らかにする。
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