研究課題
超高齢社会の日本では、認知症患者の増加に伴い、いかに健康寿命を延ばすかが喫緊の課題となっている。その一つの方法として、認知機能低下予防及び向上を目指したマルチモーダル認知介入の検討が進められている。特に、近年の楽器介入研究では、楽器訓練により高齢者の認知機能を向上できる可能性が示唆されているが、その神経基盤は未だ明らかになっていない。そこで本研究では、楽器訓練が高齢者の認知機能に与える効果およびそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。本年度は、高齢者における鍵盤ハーモニカを用いた楽器訓練プログラムのランダム化比較試験を実施することで、介入前後で変化した認知機能、ワーキングメモリ課題遂行中の脳活動および機能的結合が変化した脳領域を特定した。具体的には、楽器介入によって、統制群と比較して介入群では、(1)言語記憶課題成が有意に改善した。(2)楽器介入による脳機能への効果において、介入群では、ワーキングメモリ課題をしている際の脳活動が介入後に減少した。(3)脳活動の結果と同様に、ワーキングメモリ課題中の機能的結合も介入後に減少し、さらに、その機能的結合の減少が大きいほど、言語記憶の改善が大きかった。これらのことから、脳活動の減少は、神経処理効率化を示すと考えられた。これらの成果は国際学会にて発表され、国際学術誌Human Brain Mappingに掲載された。また、楽器演奏訓練が高齢者の脳形態に与える影響について、MRIデータの解析を行い、論文の投稿へ向けて準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
楽器演奏訓練が高齢者の認知・脳機能に与える効果に関する研究について、その成果が国際学会にて発表され、国際学術誌Human Brain Mappingに掲載された。また、楽器演奏訓練が高齢者の脳形態に与える効果に関する検証について、MRIデータの解析が進められ、来年度中に論文を投稿できる予定である。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
今後の研究の推進については、楽器演奏訓練が高齢者の脳形態に与える影響を明らかにした上で、行動・脳機能指標と併せて検討する。脳構造データを解析し、行動及び脳機能との関連性を明らかにし、論文執筆・投稿を進める。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Human brain mapping
巻: 42 ページ: 1359-1375
10.1002/hbm.25298