現在利用されている空気圧縮による冷却手法は非効率かつフロンガス等の利用から環境への悪影響が懸念されている。その代替として、弾性熱量効果を示す超弾性合金を冷媒とした冷却手法が注目されている。通常の弾性熱量効果は応力印加時に発熱、除荷時に冷却するが、逆の温度変化を示すものを逆弾性熱量効果と呼ぶ。本研究の目的は大きな変態潜熱、小さな変態ヒステリシスを有し、逆弾性熱量効果による大きな冷却効果を示す合金を開発することである。逆弾性熱量効果についての報告は極わずかであり、これまでにリエントラント変態による逆弾性熱量効果の報告はない。まず初めに、リエントラント変態を示すCo-Cr-Al-Si合金にて逆弾性熱量効果実証を試みた。そこで、Co-Cr-Al-Si合金にて逆弾性熱量効果を実証した。さらに、本合金は環境温度により通常の弾性熱量効果も示し、環境温度により弾性熱量効果と逆弾性熱量効果が切り替わる”Elastocaloric switching effect”を発見した。これは、これまでに報告のない現象である。これら研究結果に一部は国際学術雑誌への投稿論文として纏められている。 一方、当初のCo-Cr-Al-Si合金は逆弾性熱量効果が得られるものの、230 K以下の低温で、2 K程度の温度変化に限られた。そこで、初めの調査で得られた知見を基に、室温で大きな温度変化が得られる合金を探索した。その結果、当初の合金に対して、約4倍の逆弾性熱量効果を室温で示す合金を開発した。これら結果は、論文化し投稿する予定である。
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