研究課題/領域番号 |
20J11240
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岸 和寿 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 消化管運動 / カハール介在細胞 / 糖尿病 / 超音波検査 / in vivo |
研究実績の概要 |
本研究は研究期間内に、糖尿病によって引き起こされる消化管運動異常(糖尿病性胃腸症)の病態ステージにおける表現型とカハール介在細胞(ICC)の形態および機能的変化の全容を解明し、糖尿病性胃腸症に対する新たな治療戦略の基盤を構築することを目指す。 令和2年度の研究においては、昨年度樹立した超音波検査による消化管運動解析手法を本研究に取り入れ、近年ヒトの糖尿病患者での報告が増加している消化管運動亢進異常が糖尿病発症初期段階で生じることをin vivoレベルの実験で証明した。また、糖尿病環境がICCを介して消化管運動を促進させる機構の解明として、持続的な高血糖がc-Kitシグナリングを介してICCの異常増殖とペースメーカー機能の上昇を引き起こすことを明らかにすることができた。加えて、c-Kitシグナリングによる消化管運動制御機構の解明と応用を目的とし、c-Kitミュータントマウスに糖尿病を誘発させる実験系を構築し、その病態評価を進めた。 今後、ICCによる膜電位変動の伝搬パターンや細胞膜電位の実測による異常の評価、c-Kitシグナリングの制御が消化管運動性に与える影響を評価していく。さらに、c-Kitをターゲットとした抗悪性腫瘍薬イマチニブによる治療効果の検証を目的として、イマチニブの投与期間や濃度を決定するための条件検討について評価を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R2年4月から大学の研究はCOVID-19パンデミックによりほぼ完全に停止され、わずかに必要最低限の飼育実験動物や細胞の維持のみという状況が強いられた。本研究においてもその例外ではなく、動物数の縮小により緊急事態宣言回避後も研究復旧には長い時間を要した。しかし、その後最終年度のための予備実験や共同研究体制の構築など、糖尿病初期の環境がICCの形態と機能に与える影響を調べるための実験系は順調に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今後も糖尿病環境におけるc-Kitシグナリングの変化がICCの増殖と機能を促進する機構、消化管運動亢進の制御機構を解明し、最終的にこれを応用した糖尿病性胃腸症に対する新たな治療方法の提案を行っていく。来年度は実際に治療を目的としてイマチニブを糖尿病モデルマウスに投与する実験を開始する。現時点で研究計画の変更や研究遂行上の問題はない。
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