研究課題
海洋マントルは大陸下のマントルに比べ、シンプルな進化過程を経て形成されており、リソスフェア-アセノスフェア構造の基本形を調べる場として適している。その構造探査の手法の一つに、広帯域表面波アレイ解析がある。これは、表面波の位相速度を計測し、地殻からマントル深部(~300 km)までの1次元速度構造を高精度に推定する手法である。表面波にはレイリー波とラブ波の2種類がある。両者を組合せることで、例えば方位異方性や鉛直異方性構造(S波の伝播や振動方向による速度の違い)を明らかにし、現在および過去のマントルの流動現象を可視化できる。レイリー波を対象としたアレイ解析手法は確立されているが、長周期(>10秒)ラブ波の位相速度の計測は技術的に困難であった。本年度は、主に基本モードラブ波の位相速度を計測する手法を開発した。海域構造の特性(地殻が薄いこととマントル内の低速度層の存在)により、異なるモードのラブ波は分離することなく重なり合った状態で観測点に到来する。そのため、ラブ波のモード間の干渉が生じる。レイリー波と同様の手法(観測波形を基本モードとみなし解析する手法)でラブ波を解析すると、位相速度の計測結果にバイアスが生じうる。そこで本研究は、ラブ波を振幅が相対的に大きい基本モードと1次高次モードの合成波として扱い、このようなバイアスの低減を試みた。実際、理論波形を用いたシンセティックテストの結果、高次モードによるバイアスを1-2 %以上低減できることがわかった。また、実際の観測データにも手法を適用し、周期30-100秒の基本モードラブ波の位相速度を計測した。さらに、前年度までに計測したレイリー波位相速度も使用することで、マントルの鉛直異方性構造を制約した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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