研究実績の概要 |
アムールチョウザメhsd3b、cyp17a1、cyp17a2およびhsd17b12Lの完全長cDNA配列のクローニングおよび転写産物の酵素活性解析を行なった。アムールチョウザメにおいて、hsd3b、cyp17a1、cyp17a2およびhsd17b12Lの働きによりプレグネノロン(P5)から17α, 20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン(DHP)が合成されることを示した。アムールチョウザメにおけるDHP産生を担う酵素をコードする遺伝子は、チョウザメ類より上位に位置するサクラマスやナイルティラピアと共通していたことから、条鰭類を通してDHP産生を担うステロイド合成酵素をコードする遺伝子は一貫していることを示した。 卵成熟前後の卵濾胞におけるアムールチョウザメhsd3b、cyp17a1、cyp17a2およびhsd17b12LのmRNA発現動態を調べた。成熟期に黄体形成ホルモン(LH)の刺激によりアムールチョウザメhsd3b mRNA量が急増し、その後、 cyp17a1 mRNA発現の抑制およびcyp17a2 mRNA発現の促進が生じることで、P5から17OHPが産生されることを示唆した。17OHPが産生された後、hsd17b12L mRNA発現がLH刺激により誘導されDHPが産生されるという制御機構を予測した。また、アムールチョウザメhsd17b12L mRNAのLH刺激による発現誘導はサクラマスと異なり強くなく、アムールチョウザメcyp17a1 mRNA発現にメダカでみられるような急激な抑制はみられなかったことから、3β-HSDによるP4の産生調節がアムールチョウザメのDHP産生に重要であることを示唆した。さらに、アムールチョウザメにおいて、cyp17a1 mRNA発現の抑制およびhsd17b12L mRNA発現の誘導が卵成熟および排卵の誘導に極めて重要であることを示した。
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