研究課題/領域番号 |
20J11361
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
間枝 遼太郎 北海道大学, 文学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 諏訪信仰 / 諏方大明神画詞 / 諏方大明神講式 / 先代旧事本紀 / 聖徳太子伝 / 上代文学 / 中世文学 |
研究実績の概要 |
令和2年度に実施した研究の主な成果は以下の通りである。 【1】諏訪信仰の代表的な縁起書である『諏方大明神画詞』の諸本調査を行い、現存写本の中で3番目(あるいは2番目)に書写年代が古い新出写本の叡山文庫天海蔵本を発見した(叡山文庫本の解題・翻刻は『北海道大学大学院文学院 研究論集』第20号に公表)。また、諸本調査の成果を承け、『諏方大明神画詞』諸本の系統や書写年代の問題を再検討し、これまで最古写本とされてきた権祝本が実際は最古写本でないと考えられることなどを指摘した(この成果については後日論文にて公表予定)。 【2】諏訪明神の縁起について、聖徳太子伝の受容という観点から縁起の内容と展開を整理した。その結果、『諏方大明神講式』(『諏方大明神画詞』を編纂した諏訪円忠の手になる儀礼テクスト)において太子伝が取り入れられて縁起の変容が発生していること、そしてその『諏方大明神講式』を介した変容が後の諏訪信仰・諏訪明神縁起にも多大な影響を及ぼしていることを明らかにすることができた(この成果の一部は『國學院雑誌』第122巻第5号に公表)。 【3】諏訪明神の縁起と関わる『先代旧事本紀』についての研究を進め、『諏方大明神画詞』における国譲り神話の受容を具体例として、『先代旧事本紀』が神社との関わりの中でどのように受容されていったのか、その一端を探った(この成果については『國學院雑誌』第121巻第10号に公表)。また、上記の『先代旧事本紀』の受容の問題に取り組む中で得られた視点を活用することで、新たに『先代旧事本紀』そのものの叙述についても従来とは異なった角度から検討を加えることができた(この成果については『古代中世文学論考』第42集に公表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
諏訪明神縁起の展開については、『先代旧事本紀』や聖徳太子伝の受容という観点から多角的に研究を進め、論文を公表することができた。また、本研究の中心となる文献である『諏方大明神画詞』についても、諸本調査により基礎的な検討を進めることができた。さらに、『諏方大明神画詞』における『日本書紀』の受容に関する問題や、吉田兼倶における『先代旧事本紀』利用の問題などについても近く論文にて公表する用意があり、研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、令和2年度に実施した『先代旧事本紀』や聖徳太子伝の受容をめぐる研究などを基盤として、それを発展させる形で研究を進め、論文を公表することを計画している。また、現在までの机上調査により新たに諏訪明神の縁起に関わる重要な新出資料を発見することができたため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の日本国内の感染状況が一定以上改善された場合、当該資料の実地調査を行い、詳細を論文にて公表する予定である。
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