研究課題/領域番号 |
20J11378
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
石川 瑞穂 鳥取大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | MTA1 / S100A4 / 血管内皮 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、「MTA1-S100A4複合体形成を検出するスクリーニング系の構築」に着手するために必要な最初の段階としてタグ融合MTA1およびタグ融合S100A4タンパク発現ベクターの構築をおこない、さらにin vitroの評価系およびin vivoの評価系の準備をおこなった。タグ融合S100A4タンパク発現ベクターは、予定通りにベクターの構築を進め、ヒト膵癌細胞株への導入を行い付加したタグに対する抗体を用いたウエスタンブロットを行うことにより融合タンパクが発現することを確認した。一方、タグ融合MTA1タンパク発現ベクターはMTA1が持つ遺伝子配列の特性により一部未完成の状態にあるが、すでに完成したベクターに関しては融合タンパクの発現をウエスタンブロットにて確認していることもあり、おおむね完成に向かって進んでいる。こうした状況を踏まえた上で計画全体の遅延にならぬよう、上述のベクター構築と並行して、in vitroおよびin vivoスクリーニング系の準備にも着手した。In vitroスクリーニングは、ヒト血管内皮細胞を用いた管腔形成評価系を構築した。他方in vivoスクリーニングのためのxenograftモデルにおいては、生体発光イメージングを用いて評価するために必要となるルシフェラーゼ遺伝子を導入したヒトがん細胞株3種(PANC1-Luc、143B-Luc、HT1080-Luc)を新たに作製した。いずれもヌードマウス皮下移植による腫瘍形成および生体イメージングシステムにより発光量が測定できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、タグ融合MTA1およびS100A4タンパク発現ベクターの構築とin vitroおよびin vivo評価系の準備を行なった。タグ融合S100A4タンパク発現ベクターは、計画通りにベクターの構築および融合タンパク発現を確認することができた。他方タグ融合MTA1タンパク発現ベクターは遺伝子配列の特性により一部未完成の状態にあるが、概ね完成に向かって進んでいる。このタグ融合MTA1タンパク発現ベクター構築の遅れに伴い令和2年度中のスクリーニング系完成には到らなかったが、次年度の早い時期に完成予定である。計画全体に遅れが生じないように、ベクター構築と同時にその後の段階で用いる予定であるin vitroおよびin vivoの評価系の準備を一部前倒ししておこなったため、スクリーニングで見いだされた化合物を直ぐにin vitroおよびin vivoの評価系へ進める状況を整えている。従って、全体としては概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、未完成のタグ融合MTA1タンパク発現ベクターを早急に構築すると共に、候補化合物のスクリーニングおよびin vitro・in vivo系を用いた候補化合物の最終決定という目的達成のため、MTA1-S100A4複合体形成を検出するスクリーニング系の構築およびその実験系を用いた候補化合物のスクリーニングを進める。まずはタグ融合MTA1タンパクおよびタグ融合S100A4タンパクを細胞内で同時に発現させ、両タンパクが複合体を形成すること、そして複合体形成を蛍光量にて定量化できることを確認する(=スクリーニング系構築完了)。その次の段階として構築したスクリーニング系を用いて蛍光量を指標としたMTA1-S100A4複合体形成阻害候補化合物の探索を順次進め、阻害効果の高い化合物の絞り込みを進めていく。最終的には絞り込んだ候補化合物を用いてin vitro系であるヒト血管内皮細胞を用いた管腔形成評価系およびin vivoスクリーニングとしてのxenograftモデルによる腫瘍退縮効果評価系を行うことでMTA1-S100A4複合体の形成を阻害する新規候補化合物の決定を行う。
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